鍼灸

鍼灸の概要

鍼灸（しんきゅう）は、鍼や灸を用いて身体に刺激を加えることで、健康を促進し、さまざまな疾病を治療する民間療法です。主に中国の伝統医学に由来し、補完・代替医療の一環とされています。鍼灸の歴史は古く、諸子百家の時代にまで遡ることができますが、その理論が体系化されたのは、戦国時代から後漢時代にかけてのことです。この時期に成立した『黄帝内経』や『黄帝八十八難経』は、鍼灸治療の基本を築く重要な文献となりました。

鍼灸の技法

身体に加えられる物理的な刺激は、さまざまな病態に対する治療法として確立されました。近世以前は、生薬とともに東アジア各国で重要な医療技術として発展しましたが、特に日本では17世紀から19世紀にかけて独自の技術の進化がみられました。日本では、鍼灸を行うことができるのは医師の他に「はり師」や「きゅう師」に限定されます。

欧米における認識

20世紀後半には、鍼灸が欧米においても有用な医療技術として認識されるようになり、英語ではAcupuncture and Moxibustionという表現が使われています。1996年には世界保健機関（WHO）によって鍼に関する国際会議が開催され、1999年には鍼治療の基礎教育と安全性に関するガイドラインが発表されました。また、UNESCOは2010年に「伝統中国医学としての鍼灸」を無形文化遺産に指定しました。

日本における鍼灸の発展

日本においては、鍼灸技術は古代から伝来したとされ、特に遣唐使による鍼灸の技術の伝播が影響を与えました。701年に制定された大宝律令には、医療を司る官職として鍼博士も規定されており、丹波康頼が『医心方』を編纂したことで鍼灸の知識が継承されました。江戸時代に入ると、杉山和一が外筒による手法を導入し、盲人が鍼灸の技術を担ったため、日本の鍼灸は「見て刺す」技術から「触って刺す」技術へと進化しました。

鍼灸と医療制度の変遷

明治時代になると、西洋医学の流入に伴って鍼灸は一時衰退しましたが、大正時代に入ると伝統医学の復興が進みました。昭和中期には医療制度の改正が行われ、1987年には鍼灸の国家資格制度が整備されました。現在、鍼灸師になるには、指定された養成機関での学びが必須です。

国際社会における鍼灸

鍼灸は、東アジアの伝統医学のひとつとして国際的に認知されており、最近ではその標準化の動きも見られます。2009年には国際標準化機構（ISO）によって鍼灸に関する規格が設けられました。

今後の展望

現代において鍼灸は、多様なニーズに応える療法として再評価される中、国際的な広がりを見せつつあります。鍼灸の有効性や安全性についての研究も進んでおり、今後の発展に期待が寄せられています。

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