東国史略 (朴祥)

『東国史略』について

『東国史略』（とうごくしりゃく）とは、李氏朝鮮時代中期に活動していた儒学者朴祥（パク・サン、1474年 - 1530年）によって編纂された歴史書です。この書籍は、古代朝鮮の檀君朝鮮から高麗時代の終わりまでの歴史を網羅しており、全6巻2冊から成り立っています。

書籍の背景と編纂時期

朴祥の『東国史略』は、朝鮮の歴史を振り返る中で重要な役割を果たしました。歴史書の編纂は、1458年に『東国通鑑』が完成した後、一時的に停滞しました。しかし、16世紀に入ると、個人による『東国通鑑』の要約や再編成の動きが見られ、朴祥はその中でも特に代表的な著作を残しました。この書は、権近が以前に編纂した『東国史略』と同名ですが、その内容は異なり、朴祥の作品は高麗時代までを扱っています。

書籍には序文や跋文が存在しないため、その編纂の動機や具体的な年代ははっきりしていません。研究者の間では、朴祥が中宗17年（1522年）頃に編纂したと考えられていますが、一部の学者はより早い段階を主張しています。具体的な成立時期については議論がありますが、朴祥の独自の視点や意図が反映されているのは間違いありません。

内容の特徴

『東国史略』の内容は、朝鮮初期の歴史を中心に構成されており、特に高麗末期に関する記述が注目されています。朴祥は、高麗王朝に忠誠を尽くした人物については賛美し、朝鮮の始まりに貢献した鄭道伝に対して否定的な見解を示しています。このような記述は、当時の士林派の歴史的視点を反映しており、李氏朝鮮の創設を巡る考え方の違いを明らかにしています。また、当時の文化的背景や地域的差異も考慮に入れられたことが伺えます。

中国への伝播

朴祥の『東国史略』は、後に中国に伝わり、『朝鮮史略』というタイトルで知られるようになりました。この書が中国に広まったのは文禄の役（壬辰倭乱）時に、明軍の一員であった馮仲纓がこの書を手に入れ、帰国後に広めたためです。中国に伝わった際には、内容が整理され、『四庫全書』にも収録されることになりました。

結論

『東国史略』は、李氏朝鮮時代の歴史を知る上で欠かせない資料であり、朴祥の独自の観点から描かれた文化的背景や歴史的認識が色濃く反映されています。これにより、当時の人々が歴史をどのように理解し、評価していたのかを考察する上での一助となります。朴祥の努力によって成し遂げられたこの歴史書は、今日でも研究の対象として重要な位置を占めています。

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