東安鎮事件

東安鎮事件の概要

東安鎮事件（とうあんちんじけん）は、1939年5月末にアムール川の饒河県東安鎮近隣で起きた軍事衝突である。この事件は、ソビエト連邦と満州国の間の国境を巡るトラブルの一環であり、多くの歴史的背景を抱えている。具体的には、アムール川に存在する島々を巡る領土問題が根底にあり、この衝突はその中でも特に重要なものであった。

背景

アムール川は、ロシア沿海州と満州の間の国境を形成しているが、この地域においては長年にわたる領土問題が存在していた。特に、川上の島々についての対立が深刻で、ソ連側はアイグン条約を根拠に全島を自国領として主張していた。一方で、中国側はこの条約を不平等とし、国際法の原則に基づいて国境線を川の中央に設定するべきだと反論していた。この対立は、1931年の満州事変以降も続き、日本・満州国とソ連との関係には常に緊張が存在した。1937年には、日本軍がソ連の砲艇を撃沈する事件が起きるなど、武力衝突が度々発生していた。

特に、偏瞼子島は満州国の南屯とソ連のヴィドナヤ区域の間に浮かぶ島であり、これもまた領有権を巡る争いの焦点となっていた。満州国軍は、東安鎮に騎兵部隊を配置し、国境警備を強化していた。

事件の経過

事件は、1939年5月24日に満州国軍の騎兵第10団付きの日本人軍官、堀江上尉によって計画された掃討作戦から始まった。彼は、偏瞼子島が抗日ゲリラの拠点となっているという情報を受け、部隊を率いて上陸することを決定した。堀江隊は、騎兵と砲艇2隻を指揮し、成功を収めるべく行動を開始した。

しかし、5月26日に上陸を試みた際には敵勢力に遭遇することがなく、一時的に引き揚げることとなった。翌日の5月27日、堀江隊が再び偏瞼子島に上陸したところ、待ち伏せしていたソ連軍からの攻撃を受け、激しい戦闘が展開された。堀江上尉は戦死し、部隊の多くが被弾、砲艇も炎上し、多大な損害を出した。生存者たちは川を泳いで逃げようとしたが、その多くが射殺されるという惨事が発生した。

この事件の結果、日本の第4師団と満州国軍三江地区警備司令部は反撃を計画したものの、関東軍司令部の下命により反撃は中止され、紛争の拡大は避けられた。ソ連はこの事件を報復として捉え、奪取した砲艇を戦利品として運び出した。

まとめ

東安鎮事件は、ソ連と満州国の間における複雑な国境問題を浮き彫りにした出来事であり、一連の紛争の中でも特に記憶に残るものとされている。この事件は、国際的な緊張の高まりを反映しており、アジアの歴史においても重要な位置を占めている。

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