東廻海運

東廻海運とは

東廻海運は、江戸時代前期に確立した、東北地方と江戸を結ぶ重要な海上輸送路です。具体的には、日本海沿岸の酒田を起点とし、津軽海峡を経由して太平洋を南下、房総半島の東側を迂回し、伊豆半島の下田で風待ちをした後、東京湾へと入る外海江戸廻りの航路を指します。この航路は、主に東北地方の諸藩が江戸へ米などの物資を輸送するために利用されました。

東廻海運の始まり

東北地方から江戸への海上輸送は、慶長年間末（1614年頃）に、大坂の陣に備えて盛岡藩の蔵米が三陸沿岸から江戸へ廻漕されたのが始まりとされています。元和年間（1615年-1624年）になると、盛岡藩、仙台藩、米沢藩などの蔵米が三陸の港や石巻湊、荒浜などから恒常的に輸送されるようになりました。その後、弘前藩も寛永2年（1625年）に青森港を開港し、江戸への廻米を開始しました。明暦元年（1655年）には秋田藩が土崎港から津軽海峡経由で江戸へ廻米し、日本海から太平洋を回る航路が開かれ、寛文4年（1664年）には八戸藩も鮫港から廻米を行いました。

内川江戸廻りから外海江戸廻りへ

当初、東北地方から江戸への廻船は、那珂湊や銚子までを海路とし、危険な犬吠埼沖を避けて利根川の水運を利用する内川江戸廻りが主流でした。しかし、寛文11年（1671年）に、江戸幕府の命を受けた河村瑞賢が、東北諸藩の領内産米を房総半島を迂回して伊豆半島の下田から外海江戸廻りで直接江戸に運ぶことに成功しました。この外海江戸廻りは、従来の航路に比べて距離は長くなるものの、利根川の遡上を避けることができ、より効率的な輸送を可能にしました。

東廻海運の発展と課題

東廻海運は、江戸幕府の開府と東北諸藩の成立によって輸送量が増大しました。しかし、外海江戸廻りについては、幕府が廻漕船を直接雇用し、運賃を低く抑えるなどの奨励策をとったにもかかわらず、航海の安全が十分に保証されなかったため、西廻海運ほどには発達しませんでした。河村瑞賢自身も、寛文12年（1672年）の酒田からの廻米には西廻りを採用しています。また、日本海沿岸からの東廻りの廻米は、廻船の調達などの問題から、実際には西廻りが優先されることが多かったようです。

犬吠埼沖は現在でも海の難所であり、利根川の水運の重要性は依然として変わっていません。

東廻海運に関連する情報

参考文献
『日本史大事典 5』 平凡社、1993年、ISBN 4-582-13105-0、960頁
『日本大百科全書 19』 小学館、1988年、ISBN 4-09-526019-X、409頁
関連項目
文治政治
田名部七湊
利根川東遷事業
近海郵船：1999年まで外海江戸廻りに近いルートをとる東京港 - 釧路港のフェリー航路を運航していた。
商船三井さんふらわあ：内川江戸廻りに近いルートをとる大洗港 - 苫小牧港のフェリー航路を運航している。
外部リンク
塩竈市 浦戸の歴史 瑞軒の道
山形河川国道事務所 最上川電子大事典
* 銚子海上保安部 海の安全情報

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