土崎港

土崎港（つちざきみなと）

秋田県秋田市北部に位置する土崎港は、単に「土崎」とも呼ばれる地域です。この地域は、土崎港北、土崎港中央、土崎港西、土崎港東、土崎港南、土崎港穀保町、そして住居表示未実施の土崎港御蔵町、土崎港下浜町、土崎港相染町、土崎港古川町から構成されています。2020年の調査では、人口は約2万人となっています。

本項では、現在の土崎港地区だけでなく、1941年に秋田市に編入された旧土崎港町、さらには出羽国秋田郡土崎湊とその周辺地域についても解説します。

概要

土崎港は、秋田市の中心部から北西約7kmに位置し、市内でも比較的多くの人口を抱える地区です。主に住宅街として機能しており、秋田市北部市民サービスセンターが置かれています。また、重要港湾である秋田港を擁し、JR奥羽本線の土崎駅や土崎神明社が中心部に位置します。西部には秋田市ポートタワー「セリオン」、南東にはJR東日本の秋田総合車両センター（旧土崎工場）があります。東側には陸上自衛隊秋田駐屯地が隣接しています。周辺地域としては、東は将軍野、西は秋田運河を挟んで向浜、南は寺内、北は飯島と接しています。

歴史的に見ると、土崎は出羽国における都心的な役割を長く担っていました。現在では、秋田市中心部の他に官公庁の出先機関が多く立地しており、秋田市の副都心としての重要性が高まっています。毎年7月には、国の重要無形民俗文化財に指定されている「土崎神明社例祭」（土崎港曳山まつり）が開催され、多くの人々が訪れます。

歴史

土崎は、雄物川の河口（現在の秋田運河）に位置する港町として発展しました。その起源は、平安時代の蝦夷討伐軍が秋田城への物資補給のために利用した港に遡ります。室町時代には、安東氏が湊城を築き、三津七湊の一つとして栄えました。江戸時代には、佐竹氏久保田藩の藩港として、また北前船の寄港地としても重要な役割を果たしました。現在の「秋田市土崎港〇〇」という住所表記は、1889年の町制施行時に土崎港町として登録されたことに由来します。

明治時代以降、秋田市とその周辺では油田開発が進み、特に昭和時代前半には八橋油田が国内産油量の大部分を占めていました。このため、八橋に近く、鉄道や船舶での輸送に便利な土崎には大規模な製油所が立ち並びました。しかし、1945年8月14日には、太平洋戦争末期の空襲（土崎空襲）により、製油所が破壊され、土崎地区を含め250名以上の犠牲者が出ました。

戦後の1947年には、昭和天皇が戦後巡幸で土崎を訪れ、製油所の被害状況を視察しました。八橋油田は戦後も開発が続けられましたが、次第に産油量は減少し、土崎の製油所も廃止されました。1941年には土崎港町が秋田市に編入され、戦後は宅地開発が進みました。特に、土崎と山王を結ぶ秋田天王線（通称：新国道）は、宅地開発とともに秋田の大動脈として機能するようになりました。

現在の土崎港地区は、住居表示実施後の町名を基礎としており、旧土崎港町全域を含むだけでなく、他の地域も含まれています。

年表

土崎港の歴史を年表形式でまとめました。

658年: 阿倍比羅夫が蝦夷討伐時に齶田浦（秋田浦）に寄港したとされる。
727年: 渤海国使節団が初めて秋田湊に来航。
733年: 出羽柵（後の秋田城）が秋田村高清水岡（現在の秋田市寺内）へ移設され、その外港となる。
804年: 秋田城制は停止され、代わりに秋田郡を設置。
830年: 天長地震発生。秋田城近くの「大きな川」の水が無くなる。
878年: 元慶の乱が起こる。
938年: 天慶の出羽俘囚の乱が起こる。
1189年: 秋田郡が橘公業の所領となる。
1395年: 秋田郡に安藤鹿季が分家となり、秋田城介を顕任する。
室町時代: 安東氏が湊城を建造。後城遺跡より唐銭・宋銭・明銭、中国産の磁器が多数出土。
15世紀: イタリア人サンセウントラトの「東洋地図」にAguda（秋田）が記載される。ミヤコ（京都）より北の日本海岸には秋田以外の湊の記載がなかった。
1458年: 湊城等秋田郡一帯を南部氏が統治。
1461年: 安東惟季が南部氏を追い払い秋田領を回復。
1565年: イエズス会の宣教師ルイス・フロイスに、交易の中心地出羽国の大いなる町秋田と言及される。
1570年: 第二次湊騒動発生。秋田郡一帯は安東愛季の支配下となる。
1602年: 佐竹義宣、湊城に入部。
1604年: 湊の町づくりが始まる（この頃、佐竹氏が内陸部に久保田城を築き移る）。
1615年: 一国一城令により湊城が破却される。
1620年: 破却された湊城址に川口弥左衛門が土崎神明社を建立。
江戸時代: 北前船の寄港地として栄える。
1655年: 土崎人が、津軽海峡を回って江戸に至る東廻り航路を開発。
1759年: 金比羅神社が現在地に移転。
1788年: 地理学者の古川古松軒に「久保田城下の大町筋より土崎湊の方が優れている」と評価される。
1789年: 町人津村淙庵にも同様の記述をされる。
1[[830年]]: 慈善団体土崎感恩講が発足。
1833年: 米商人に米を要求する打ちこわしがおこる。
1854年: 吉川忠安が西洋流砲台を築き、海岸防備が強化される。
1872年: 土崎湊郵便取扱所（現在の土崎郵便局）が開設。
1876年: 三菱汽船、船川・土崎両港に定期航路を開く。
1[[878年]]: 戸長役場を設置。
1889年: 町制施行に伴い、土崎湊19町と相染新田村が合併し土崎港町が発足。同時に、南秋田郡役所が土崎港町へ移転。秋田馬車鉄道（秋田市電の前身）新大工町 - 土崎間が開業。
1901年: 秋田県内初の火力発電所「近江谷発電所」が電力供給を開始。
1902年: 港の改修工事が13年をかけて終了（現在の秋田港）。南秋田郡立図書館（現在の秋田市立土崎図書館）が開設。土崎駅開業。
1905年: 奥羽本線が全線開通。
1908年: 帝国鉄道庁土崎鉄工場（後の国鉄土崎工場。現JR東日本秋田総合車両センター）が業務開始。
1910年: 日本石油秋田製油所（現在のENEOS秋田油槽所）が操業開始。
1920年: 土崎港町立実科高等女学校（秋田県立秋田中央高等学校の前身）の設立が認可される。
1941年: 秋田市に編入。同時に港湾名を土崎港から秋田港に改称。
1945年: 土崎空襲。死者250人以上。日石製油所全滅。
1948年: 秋田税務署が分割し、秋田北税務署を土崎港に新設。
1968年: 住居表示実施。
1971年: 秋田臨海鉄道線が開業。
1979年: 土崎ショッピングセンター（サンポート土崎・ジャスコ土崎港店、2011年にイオン土崎港店に改称）オープン。
1991年: 土崎駅東西歩道橋「港ウィロード」が開通。土崎図書館が移転新築し開館。
1994年: ポートタワー「セリオン」オープン。
1997年: 港曳山祭りが「土崎神明社祭の曳山行事」として重要無形民俗文化財に指定される。
2004年: JR東日本土崎工場が「秋田総合車両センター」に改称。
2010年: セリオン一帯が道の駅に指定され、「道の駅 あきた港」となる。
2011年: 「土崎湊町恋のまち」をNPO法人地域活性化支援センターが秋田県初の「恋人の聖地」に認定。秋田市北部市民サービスセンターが開所。
2018年: 旧土崎消防署跡地に土崎みなと歴史伝承館が開館。
2021年: 秋田臨海鉄道線が廃止。

旧町名

土崎港地区内の旧町名は、現在でも土崎港曳山まつりの町内名として残っています。これらの旧町名には、それぞれ歴史的な背景があります。

行政機関

土崎港には、秋田市、秋田県、国などの多くの行政機関が立地しています。

秋田市の機関

秋田市北部市民サービスセンター
秋田市消防本部土崎消防署
将軍野出張所
秋田市立土崎図書館
土崎みなと歴史伝承館

秋田県の機関

秋田県秋田港湾事務所
秋田県警察秋田臨港警察署
土崎駅前交番

その他の県域機関

秋田県漁業協同組合

国の機関

財務省国税庁仙台国税局秋田北税務署
財務省函館税関秋田船川税関支署
厚生労働省仙台検疫所秋田船川出張所
農林水産省横浜植物防疫所新潟支所秋田出張所
国土交通省東北地方整備局秋田港湾事務所
国土交通省海上保安庁第二管区海上保安本部秋田海上保安部

交通

土崎港は、鉄道、道路、バスなど、多様な交通手段が利用可能です。

鉄道

JR東日本 奥羽本線: 土崎駅
JR奥羽本線貨物支線: 土崎 - 秋田港

道路

一般国道: 国道7号、国道101号
主要地方道: 秋田県道25号秋田港線、秋田県道56号秋田天王線
一般県道: 秋田県道161号土崎停車場線、秋田県道231号上新城土崎港線、秋田県道403号秋田男鹿自転車道線

バス

秋田中央交通

港湾

秋田港（重要港湾）
秋田北港（秋田フェリーターミナル）

教育

土崎港には、高等学校、中学校、小学校、幼稚園が設置されています。

高等学校

秋田県立秋田中央高等学校

中学校

秋田市立土崎中学校
秋田市立将軍野中学校（土崎港の外にあるが、学区に土崎港の一部が含まれる）

小学校

秋田市立土崎小学校
秋田市立港北小学校
秋田市立土崎南小学校

幼稚園

土崎幼稚園（学校法人 加藤学園）
土崎カトリック幼稚園
港北幼稚園（学校法人 港北学園）

施設

土崎港には、郵便局、銀行、医療施設、商業施設、宿泊施設、スポーツ施設など、様々な施設があります。

郵便施設

土崎郵便局
土崎港郵便局
飯島郵便局

医療施設

土崎病院
五十嵐記念病院
あきたレディースクリニック安田
舛屋薬局

商業施設

宿泊施設

ホテルルートイン秋田土崎

スポーツ施設

JA共済ブラウブリッツ秋田屋内練習場
セントラルスポーツクラブ24秋田土崎
秋田サンライズゴルフセンター

出身者

土崎港出身の著名人には、政治家、官僚、芸能・文化人、スポーツ選手など、多岐にわたる分野で活躍している人々がいます。例えば、政治家としては近江谷栄次、文化人としては内館牧子、スポーツ選手としては江畑幸子などが挙げられます。

名産品

土崎港では、北限のふぐやカスベが名産品として知られています。これらの名産品を味わえる祭りも開催されています。

脚注

参考文献

秋田市史編集委員会 編『秋田市史』 第四巻 近現代I（通史編）、秋田市、2004年。
「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 5（秋田県）、角川書店、1980年。

関連文献

土崎港町『土崎港町史』土崎港町、1941年。
佐々木研吾「郷土土崎港はどのように發展したか」『東北地理』第4巻第1号、東北地理学会、1951年、49-51頁。

関連項目

三津七湊
種蒔く人
鉄道の町

外部リンク

秋田市

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