東急9000系電車

東急9000系電車は、1986年 3月9日に営業運転を開始した東急電鉄の通勤形電車です。この車両は、老朽化した初代3000系や初代5000系の置き換え、そして営団南北線・都営三田線への乗り入れに対応するために開発されました。

概要

1986年2月に量産先行車である9001Fが落成し、翌1987年度から増備が開始され、1991年3月までに15編成117両が東急車輛製造で製造されました。東急では、1983年から初代6000系の一部にVVVFインバータ制御装置を搭載して試運転を実施し、翌1984年には1500V区間でGTOサイリスタ素子のVVVFインバータ制御装置を搭載した車両では日本初の営業運転での実用試験を行いました。この時に東急車輛製造製のボルスタレス台車を装架して試験を実施し、本系列はこの結果を踏まえて設計・製造されました。

車両分類

9000系は製造年度によって以下の様に分類できます。

1次車（1985年度製）：9001F（量産先行車）
2次車（1987年度製）：9002F - 9007F
3次車（1988年度製）：9008F - 9013F
4次車（1989年度製）：9014F
5次車（1990年度製）：9015F

量産先行形の9001Fは、制御装置の形式や車内補助送風機・車外車側灯台座形状など、量産形車両と細かな違いがあります。また、3次車以降は外板幕板と腰板の構造が溶接構造からプレス加工構造に変更されました。

車両概説

本系列は軽量ステンレス鋼製の20m級4扉車体を採用しています。梨地仕上げのステンレス材を使用し、正面・側面には東急のコーポレートカラーである赤帯が巻かれています。前面は従来車と同様の切妻スタイルで、地下鉄直通を考慮して非常扉を装備しています。非常扉は助士席側にオフセットされており、運転士側のスペースと視野の拡大が図られています。車内には非常脱出用のはしごが設けられています。

行先表示器は字幕式で、前面は左から種別表示・行先表示・運行番号表示となっています。急行標識灯が設置されており、急行・特急での運用時に点灯していましたが、2002年4月から使用が停止されました。

冷房装置は分散式で、落成当初は東芝製RPU-2214形を各車4台搭載していました。

内装

内装は8090系と同様の「ソリッドパターン」と呼ばれる模様の入ったベージュ色の化粧板を使用し、床材は茶色の塗り床です。座席はドア間が7人掛け、車端部が3人掛けのロングシートとなっています。座席は1人分の幅が拡大され、座席端には袖仕切りが設けられています。

9001Fでは、先頭車両の車端部に日本初となるLED式車内案内表示器が搭載されました。また、落成当初から東急の車両で初の音声合成式自動放送装置を搭載しています。

側窓はサッシュレス構造を採用し、遮光カーテンが設置されています。

乗務員室

乗務員室は乗務員の運転操作性向上を重視した設計となっています。室内はアイボリーの配色、運転台はワインレッド調の配色です。主幹制御器はデッドマン装置付のT字形ワンハンドル式です。運転台上部には故障時のガイダンス処置を表示するモニタディスプレイが設置されています。

東急で初めてウインドウオッシャ付きの電動式ワイパーを採用しました。また、警笛は空気笛に加えて電子ホーンを採用しています。

主要機器

東急の量産車で初めてVVVFインバータ制御とかご形三相誘導電動機を採用しました。制御装置は日立製作所製で、1台の制御器で4台の電動機を制御します。主電動機は日立製作所・東洋電機製造製の共通設計品で、MT比1：1で高い起動加速度を確保しています。

制動装置は回生ブレーキ付きの電気指令式ブレーキです。回生ブレーキの動作範囲は停止直前までと広くなっています。

台車は軽量ボルスタレス台車を採用しています。

改造

冷房装置の換装
ATC-P取り付け改造
転落防止幌設置
内装の改造
室内更新工事
シングルアームパンタへの交換
スカートの取り付け
車外スピーカー設置
車掌スイッチ交換

編成・運用

9000系は東横線・大井町線で運用されました。新製投入直後は初期故障が多かったものの、徐々に克服していきました。2004年2月1日にはみなとみらい線が開業し、東横線との相互直通運転が開始され、9000系もみなとみらい線に乗り入れました。

2006年3月18日から、大井町線から田園都市線中央林間駅までの直通電車が設定されました。2008年 3月28日からは大井町線で急行運転が開始され、田園都市線との誤乗防止のため車体前面のグラデーションカラー化と「大井町線」と書かれたステッカーが貼りつけられました。

東横線への5050系増備に伴い、2009年度から本格的に東横線から大井町線への転属が開始されました。

今後の予定

9000系は老朽化に伴い、2025年夏より6020系により置き換えが開始される予定です。また、一部の車両は西武鉄道に譲渡される予定です。

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