東武デハ1形電車

東武デハ1形電車について

概要

東武デハ1形電車は、1924年に導入された東武鉄道の初代電車です。この電車は、10月1日に伊勢崎線浅草から西新井間の電化に合わせて運行が開始されました。本形式は、全8両（デハ1からデハ8まで）の構成で、すべて両運転台の電動車です。製造は日本車輌製造の東京支店により行われ、当時の技術の最前線を反映した車両となっています。

車体構造

デハ1形は16メートル級の木造ダブルルーフを持ち、車両の外観は茶色一色に仕上げられています。また、前面は緩やかな曲面で、5枚の窓が特徴的です。この窓の配置は、左右両端に行先表示窓が設けられているため、中央の3枚と比べて上下寸法が縮小されています。側面の窓配置は「1D232D232D1」で、乗務員扉はありません。客用扉の下部にはステップが設けられ、客用扉引き込み部分が一段下がった形状をしています。運転台は車両の中央に設置されており、車内はロングシート仕様になっています。

機器類

この電車の主要機器は、当時の国産メーカーの技術が未熟だったため、主に輸入品を使用しています。主電動機はウェスティングハウス製のWH556-J6を1両4基搭載しており、制御器は電磁空気単位スイッチ式の手動加速制御（HL制御）です。台車には、当時広く用いられていたJ.G.ブリル27-MCB-2の釣り合い梁式台車が装備されており、制動装置はAMM自動空気ブレーキが採用されています。また、パンタグラフは屋根の前後両端にそれぞれ2基配置されています。初めて導入された連結器は簡易型でしたが、後に通常の自動連結器に交換されました。

運用の変遷

導入後、デハ7とデハ8は早い段階から制御車として運用されるようになり、公式に1931年には電装解除されて電装品が他車に移設されました。1934年にはデハ2も電装解除され、経歴はさらに変遷していきました。また、1947年から1948年にかけては、デハ3、デハ4、デハ6が地方私鉄に譲渡される事例も見られ、特にそれぞれ上信電気鉄道新潟交通に寄贈されています。

大改番による形式の再編

1951年には大改番が行われ、デハ1形はモハ1100形に、クハ1形はクハ210形に改称されました。例えば、デハ1はモハ1100、デハ2はクハ1形11と改称されました。その後、1954年には新たにキハ2000形が登場し、運用の変化が見られました。

最後の行歴

最後まで電車として残ったモハ1101は、戦後の電気機関車代用として運用されましたが、1981年には東武動物公園での保存が決まりました。デハ5という形式名で再現され、外装や設備が整えられました。1989年には東武博物館に移設され、今もなお多くの人々に愛されています。これは、東武デハ1形電車が歴史的に大変価値のある存在であるからに他ならず、その色あせない魅力が続いていることを示しています。

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