東武デハ2形電車

東武デハ2形電車

東武デハ2形電車は、1925年に東武鉄道によって新製され、同社の初の半鋼製車両として位置づけられています。本記事では、この形式およびその関連車両であるクハ1形を含めた大正14年系の特徴と歴史について詳しく探ります。

概要

東武鉄道は1924年に伊勢崎線の浅草から西新井間を電化した際、最初の電車として大正13年系デハ1形を新製しました。しかし、輸送需要の増加により、これに対応する制御車が必要となりました。その結果、1925年に新たに開発されたのがデハ2形です。クハ1形1 - 6が11月に、デハ2形9・10が12月にそれぞれ新製されました。この時、デハ2形はデハ1形の続番を採用し、戦前の東武での車両番号付与基準を先駆けて適用しました。全製造車両は日本車輌製造東京支店で製作されました。

デハ2形の最大の特徴は、鉄骨木造から半鋼製車体への移行が行われた点です。これは、木造構体から半鋼製、さらには全鋼製への過渡期に位置しており、東武鉄道においても初めての試みとなりました。ロングシートを採用し座席にはトイレが設置されておらず、利用者にとってはシンプルで清潔感のある車両設計となっています。

車体の特徴

デハ2形およびクハ1形の車体は、全長15,940mmの半鋼製構体を備え、両側に運転台が設置されています。屋根はシングルルーフ構造で、前面には丸妻のデザインが施されており、5枚の前面窓が配置されています。側面の窓配置は1D2 3 2D2 3 2D1で、客用扉下部にはステップが備えられた仕様です。

主要な機器

この系列に搭載されている機器は、大正13年系デハ1形と同一の仕様が基本となっています。主制御器にはウェスティングハウス製の電磁制御器が採用されており、主電動機は定格出力74.6kWのものを4基装備しています。駆動方式は吊り掛け式であり、安定した走行性能を誇ります。台車は釣り合い梁式のブリル27-MCB-2を採用し、制動装置にはウェスティングハウス製の自動空気ブレーキが装着されています。

導入とその後の変遷

デハ2形は、導入以来大正13年系の車両とともに運用されていましたが、1931年の電動車化改造によりクハ1形も電動車に変わりました。戦中の1945年には、本系列のデハ101形101・104が空襲によって車体が焼失するという不運にも見舞われましたが、1947年には回復工事が行われ、再度運用に就くことができました。

戦後の混乱期にも関わらず、デハ2形は生き残り、1951年の大改番ではモハ1110形やクハ420形等に形式改編が行われました。特に、デハ2形として最後に残った車両は1955年に荷物電車に改造されることとなり、徐々に数を減らしていきました。最終的には1983年には全ての車両が廃車となり、現在ではその痕跡すらない状態になっています。

結論

東武デハ2形電車は、鉄道史において重要な位置を占める典型的な半鋼製車両の一例です。戦前から戦後にかけて多くの変化と運用を経たこの車両は、現在では当時の鉄道事情や技術の進歩を示す歴史的な存在として評価されています。この様に、デハ2形の歴史を通じて日本の鉄道文化の一面を垣間見ることができます。

もう一度検索