東海道名所図会

『東海道名所図会』は、江戸時代後期に刊行された名所図会で、寛政9年（1797年）に6巻6冊で世に出ました。この図会は、京都の三条大橋から江戸の日本橋に至る東海道沿いの名所旧跡、宿場の風景、特産物などを詳細に記述しています。また、歴史や伝説なども盛り込まれており、当時の人々の生活や文化を知る上で貴重な資料となっています。

この図会の特徴は、東海道沿いの情報だけでなく、三河国の鳳来寺や遠江国の秋葉権現社など、一部東海道から離れた場所も含まれている点です。これにより、当時の旅人たちが訪れたであろう広範囲な地域の情報を網羅的に捉えることができます。

著者は秋里籬島であり、序文は中山愛親が執筆しました。挿絵は、円山応挙、土佐光貞、竹原春泉斎、北尾政美、栗杖亭鬼卵など、約30名の著名な絵師たちが担当し、200点を超える挿絵が掲載されています。これらの挿絵は、図会の内容をより具体的に理解するのに役立ち、絵画としても高い芸術性を持っています。その質の高さから、後世の芸術家たちにも大きな影響を与えました。

1910年（明治43年）には、吉川弘文館から復刻版が出版され、現代でも容易に閲覧できるようになりました。この復刻版により、江戸時代の文化や風俗に興味を持つ人々にとって、貴重な資料として活用されています。

また、歌川広重が天保4年（1833年）に発表した保永堂版『東海道五十三次』には、『東海道名所図会』に描かれた京都に近い宿場の図が多数採用されていることが指摘されています。これは、『東海道名所図会』が当時の東海道に関する情報源として広く利用されていたことを示しています。

関連文献として、ぺりかん社から2001年に刊行された『東海道名所図会 新訂』（上中下）、羽衣出版から1999年に刊行された『東海道名所図会　復刻版』、粕谷宏紀氏による『東海道名所図会を読む』（東京堂出版、1997年）などが挙げられます。これらの文献は、『東海道名所図会』の内容をより深く理解するための参考資料となります。

『東海道名所図会』は、歴史、地理、文化、芸術など、様々な分野の研究者にとって重要な資料であり、江戸時代の東海道の様子を具体的に知ることができる貴重な文献です。その詳細な記述と美しい挿絵は、当時の人々の生活や文化を生き生きと伝えてくれます。

外部リンクとして、国立国会図書館デジタルコレクションには、『東海道名所図会』の上冊と下冊が公開されています。これらのデジタルコレクションを活用することで、より手軽に『東海道名所図会』を閲覧し、研究に役立てることができます。

国立国会図書館デジタルコレクション 東海道名所図会、上冊
国立国会図書館デジタルコレクション 東海道名所図会、下冊

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