東芝ホクト電子

東芝ホクト電子株式会社：歴史と技術革新の歩み

東芝ホクト電子株式会社は、北海道旭川市に本社を置く東芝グループの重要な関係会社です。その歴史は、第二次世界大戦末期の1943年にまで遡ります。当時、空襲の危険性から工場の疎開を計画していた東京芝浦電気（現在の東芝）は、北海道庁に適地を打診。旭川市当局や商工会議所の積極的な誘致活動が実り、旭川への工場建設が決定しました。軍需用電球製造を目的とした「愛国第二三四工場」として建設が始まり、終戦間際の1945年8月15日に落成。戦後の復興期において、平和産業への転換を誓った歴史的な瞬間でした。

1945年の創業当初は「東芝旭川工場」として電球生産を行い、1950年には過度経済力集中排除法に基づき東芝から分離独立。「ホクト電球工業」として新たな一歩を踏み出しました。東芝からの継続的な資材供給を受け、生産品の多くは「マツダランプ」として東芝によって販売されました。この独立と協業の体制は、同社の成長の基礎を築く重要な転換点となりました。

その後、同社は事業領域を着実に拡大していきます。1960年には北海道・東北地方で初めてとなるブラウン管再生事業を開始。白黒テレビ用ブラウン管の製造に踏み込みました。1967年には社名を「ホクト電子工業」に変更。1970年代には観測用ブラウン管やモノクロームディスプレイ管の製造を開始するなど、時代のニーズに応じた製品開発を積極的に行いました。

1980年代以降は、白熱球・ハロゲン電球の自社生産を終了し、カラーテレビ管用電子銃の製造開始など、技術革新を加速させました。1990年には、フレキシブルプリント配線板事業や電子レンジ用マグネトロン製造を開始。さらに、1993年には社名を「東芝ホクト電子」に変更し、新たなロゴマークを導入。同時期には、投写管や広帯域オシオ管の製造にも着手しました。

1990年代後半から2000年代にかけては、サーマルプリントヘッド、単結晶ウエハ－研磨、DNAチップ事業など、高度な技術を要する分野へと積極的に進出。グローバル展開の一環として、タイに子会社を設立し、マグネトロンの製造を開始しました。2000年代後半以降も、航空機用ブラウン管、医療用チップなど、多様な製品開発・製造を継続。2021年には、新型コロナウイルス抗原検査キットの製造にも携わりました。

現在、東芝ホクト電子は、サーマルプリントヘッド、DNAチップ・遺伝子解析装置、フレキシブルプリント配線板、電子レンジ用マグネトロン、工業用マグネトロン、航空機用カラーディスプレイ管などを主力製品としています。本社工場に加え、東京、埼玉県深谷市に事務所を、タイにも拠点を有するグローバル企業へと成長しました。

東芝ホクト電子の歴史は、時代の変化に柔軟に対応し、技術革新を追求することで、常に成長を続けてきた証です。戦後の復興から高度経済成長、そしてグローバル化へと、日本の産業構造の変化を肌で感じながら歩んできた同社の今後の展開に、更なる期待がかかります。

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