東郡大山

東郡大山（とうぐんだいさん）は、台湾の中央山脈南部に位置する、標高3,619mの山です。行政区分としては南投県信義郷に属し、この地域を代表する山の一つとして知られています。東郡山系の最高峰であり、台湾百岳の中では15位にランクインしています。また、特に高い山々を指す「十崇」の中でも、最も標高の高い山として知られています。

名称の由来

東郡大山は、ブヌン族の言葉で「Hahais（郡社群）」または「Kakais（巒社群）」と呼ばれていました。「hais」と「kais」はどちらも「境界」を意味しており、この山稜がブヌン族の郡社群と巒社群の居住地を分ける境界線となっていたことに由来します。この名称は、山が単なる地理的な存在ではなく、文化的な意味合いも持っていたことを示唆しています。

ブヌン族の神話

東郡大山は、ブヌン族の神話にも登場します。神話の一つに大洪水神話があります。太古の昔、大蛇が暴れて濁水渓を堰き止め、その結果、全土が水没するほどの洪水が発生したと伝えられています。この大洪水の中、玉山、東郡大山、卓社大山の3つの山だけが水没を免れ、人々が避難する最後の場所となりました。この神話は、山が人々の生活において、いかに重要な存在であったかを示しています。

また、もう一つの神話として、太陽征伐の物語があります。太古の時代には太陽が二つ存在し、地上は非常に暑く、生物は生きるのに苦労していました。そこで、一人の勇者が子供を連れて太陽を征伐する旅に出ました。長い旅の末、勇者は世界の果てとされる東郡大山（別名大石公山とも）にたどり着き、弓を射ました。その結果、太陽の一つが射抜かれて月に変わったとされています。この神話は、自然現象を説明するとともに、勇気や知恵の大切さを伝えています。

これらの神話からもわかるように、東郡大山はブヌン族にとって単なる山ではなく、彼らの文化や信仰、生活に深く結びついた特別な存在です。その美しい姿は、多くの登山家を魅了し、また、この地に根ざした歴史と文化は、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

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