東都書房

東都書房の歴史

東都書房（とうとしょぼう）は、1956年から1975年まで講談社内で活動していた独立採算制の出版部局です。この出版部局は、講談社の親会社に対して別名義を持つ形態で運営され、独自の法人格を有しない一方で、講談社本体とは別に新たな出版事業を展開しました。

沿革

前身となる「審議室」

東都書房の起源は、1953年に設立された講談社総務局内の「審議室」にあります。これは雑誌の廃刊により職を失ったベテラン編集者を受け入れるために設けられた部署で、実際には入手困難な出版企画を提案する役割を果たしていました。初のプロジェクトとして、1954年に『講談全集』をリライトして刊行し、予想を上回る成功を収めました。この成功が東都書房設立の背景となっているとされています。

東都書房の設立

1956年に入ると、講談社社長の野間省一の呼びかけにより、経営危機を克服するための社業刷新委員会が設立されました。その結果、同年の11月には「別会社設立委員会」が立ち上げられ、講談社内での独立採算制の出版社が設立されることが決定されました。社名は公募の結果「東都書房」とされ、1956年6月4日に初の出版物として『永井荷風選集』が刊行され、正式に活動を開始しました。

ベストセラーと人気作家の台頭

東都書房は、その発足から数年以内に複数のヒット作品を生み出しました。有名なのが、原田康子の『挽歌』や石森延男の『コタンの口笛』です。これらの作品は、活発な宣伝活動によって多くの読者に支持され、さらには受賞歴もあるなど、評価を得ました。特に『挽歌』は映画化され、東都書房の名が広がるきっかけとなりました。

推理小説への注力

1959年からは、推理小説の刊行に力を入れ、松本清張や樹下太郎の作品を盛んに発表しました。また、1961年に開始されたシリーズ『東都ミステリー』は、全53冊を刊行し、質の高い作品を多く生み出しました。推理小説だけでなく、SFや児童文学の作品も手掛け、クリエイターたちとのコラボレーションを通じて多様性を持ったコンテンツを提供しました。

後退と廃止

しかし、昭和40年代に入ると、講談社の事業が多様化し、東都書房としての独自性は次第に薄れていきました。1971年には企画室の体制変更により、東都書房の独立したスタイルは失われ、講談社の一部門として位置づけられました。

最終的に1975年に企画室が廃止されるとともに、東都書房も組織としては消滅しました。しかし、その後も「東都書房」の名義は、講談社の発行物の一部として残り続けており、時折利用されています。

主な出版物と受賞歴

• - 『永井荷風選集』全5巻（1956年）
• - 『松本清張選集』全5巻（1959年）
• - 『日本推理小説大系』全16巻（1960年～1961年）
• - 『コタンの口笛』（石森延男） - 第5回産経児童出版文化賞受賞
• - 『挽歌』（原田康子） - 第8回女流文学者賞受賞

終わりに

このように、東都書房は短期間の活動ながら、豊富な出版実績とともに日本の文学シーンに貢献した重要な存在でありました。現在でもその名が語られることがありますが、その歴史は独特で fascinating なものであったと言えるでしょう。

もう一度検索