野間省一

野間省一

野間省一（のま しょういち、1911年4月9日 - 1984年8月10日）は、日本の出版界を代表する人物であり、講談社の第4代社長を務めました。旧姓は高木で、実業家としてもその手腕を発揮しました。日本書籍出版協会会長、出版文化国際交流会会長、日本雑誌広告協会会長など、数々の要職を歴任し、出版業界の発展に大きく貢献しました。特に戦後の講談社を牽引した功績は大きく、同社を日本を代表する出版社へと成長させました。

生い立ちと初期のキャリア

1911年、野間省一は静岡県静岡市で高木磯吉の三男として誕生しました。兄の三吉も後に講談社の取締役を務めています。静岡県立静岡中学校、旧制静岡高等学校を経て、東京帝国大学法学部に進学。在学中に高等文官試験の司法・行政の2科に合格するという優秀さを示しました。

1934年に大学を卒業後、南満洲鉄道に入社。入社からわずか1年半でハルビン鉄道局文書係長に抜擢されるなど、その才能を早くから開花させました。

講談社との関わり

1941年、野間省一は講談社創業者である野間清治の長男・恒の未亡人である登喜子と結婚し、野間家に入りました。同年には講談社の常務取締役に就任し、経営の中枢を担うようになります。

1945年、第3代社長の野間左衛が辞任したことに伴い、第4代社長に就任しますが、戦争責任問題により翌年辞任。その後、1949年に再び社長に復帰し、講談社の立て直しに尽力します。

経営者としての手腕

1954年、講談社は経営危機に陥りますが、野間省一は「社長白書」を発表し、社員に体質改善、作業合理化、経費削減などを訴え、組織の改革を断行しました。この危機を乗り越えたことが、今日の講談社の発展に繋がっています。

野間省一は、1961年にキングレコードの会長も兼任するなど、多角的な経営手腕を発揮しました。1971年に脳血栓で倒れるものの、その後も出版文化の発展に貢献し続けました。1979年には、講談社創業70周年事業として、「野間アフリカ出版賞」「野間識字賞」「アジア・アフリカへの留学生奨学金制度」を創設し、国際的な文化交流にも尽力しました。

1981年に、野間惟道が第5代社長に就任した後は名誉会長となり、1984年にその生涯を閉じました。墓所は護国寺の野間家墓地にあります。

出版文化への貢献

野間省一は、数々の雑誌や書籍を創刊しました。

創刊した主な雑誌、シリーズ

「ぼくら」（1954年）
「なかよし」（1954年）
「若い女性」（1955年）
「たのしい幼稚園」（1956年）
「週刊現代」（1959年）
「週刊少年マガジン」（1959年）
「週刊少女フレンド」（1962年）
「小説現代」（1962年）
「ヤングレディ」（1963年）
ブルーバックス（1963年）
講談社現代新書（1964年）
「月刊現代」（1966年）
「週刊ぼくらマガジン」（1969年）
「テレビマガジン」（1971年）
講談社文庫（1971年）
日刊ゲンダイ（1976年）

これらの創刊は、戦後の出版文化を豊かにし、多様な読者のニーズに応えるものでした。特に、少年・少女向けの雑誌や、新書・文庫の創刊は、多くの人々に読書の機会を提供しました。

受勲と受章

野間省一の功績は、国内外から高く評価されました。

主な受勲、受章

ユネスコの第1回国際図書賞（1974年）
ローマ教皇庁大聖グレゴリオ勲章騎士団章（1981年）
オランダ政府オレンジナソー勲章コマンダー章（1981年）
ブラジル賞勲局総合学術協会グランクルス大綬章（1981年）
勲一等瑞宝章（1983年）
ユネスコ銀メダル（1984年）

これらの受賞は、野間省一が国際的な文化交流に尽力した証であり、その功績を称えるものです。

家族

野間省一の長女である野間佐和子は、第6代講談社社長を務めました。また、女婿の野間惟道も第5代社長を務めました。さらに、この2人の長男である野間省伸は、第7代社長として、現在も講談社を率いています。このように、野間家は、講談社の歴史において重要な役割を果たし続けています。

まとめ

野間省一は、激動の時代の中で、講談社の発展に尽力した傑出した出版人、実業家でした。その功績は、今日においても高く評価されており、日本の出版文化に大きな足跡を残しました。

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