杵築城

杵築城：豊後国の歴史を刻む城跡

大分県杵築市に位置する杵築城は、室町時代から江戸時代にかけて、数々の歴史的出来事を目撃してきた城です。その遺構は、山上の本丸跡と麓の藩主御殿跡の二つの主要なエリアに分けられ、現在もその威容の一部を留めています。

築城から戦国時代へ

杵築城の起源は、室町時代初期に遡ります。木付氏によって、北は高山川、東は守江湾に囲まれた天然の要害である台山に築かれました。戦略的に重要な位置にあり、連郭式の平山城として、台山を空堀で4区画に区切られた堅固な構造を誇っていました。

戦国時代には、大友氏と島津氏による激しい戦いの舞台となりました。特に豊薩合戦においては、城主である木付鎮直が籠城し、島津氏の大軍を撃退するという活躍を見せました。しかし、豊臣秀吉による大友氏改易後、木付氏は滅亡し、杵築城の歴史は新たな局面を迎えます。

江戸時代と城郭の変遷

豊臣家による蔵入地を経て、慶長年間には杉原長房、細川忠興と領主が変わり、城郭も変化を遂げました。慶長豊後地震や暴風雨による被害を受け、天守は慶長13年（1608年）の落雷で焼失。その後再建されましたが、再建天守は3重の層塔型であったと推測されています。

一国一城令の発布後、台山の主郭部は破却され、城郭機能は台山北麓の居館（後の藩主御殿）に移されました。その後、小笠原氏、松平氏（能見氏）と藩主が変わり、17世紀末までに台山の城郭は廃止され、平地に移転が完了しました。貝原益軒の『豊国紀行』にも「木付に城なし、町あり」と記されています。

正徳2年（1712年）には、幕府の朱印状の誤記をきっかけに、「木付城」から「杵築城」へと名称が変更されました。

現存する遺構と史跡指定

現在、台山地区には城山公園として整備され、本丸天守台跡には3層の模擬天守が建てられています。この模擬天守は、資料館と展望所として利用され、来訪者は城跡からの眺望を楽しめます。近年行われた発掘調査では、土塁や堀切などの遺構が発見され、城郭の変遷を明らかにする貴重な資料となっています。

麓の藩主御殿地区は、杵築神社、旧杵築中学校、旧杵築市立図書館周辺に広がり、堀、石垣、庭園などの遺構が残されています。2010年からの発掘調査では藩主御殿跡が発見され、2016年には県の史跡に指定されました。

また、旧城内城鼻地区には旧船形屋敷が現存し、民家として利用されています。これらの遺構は、杵築城の歴史を物語る重要な証であり、現在も大切に保存されています。

歴史と文化の融合

杵築城跡は、単なる城跡というだけでなく、その周辺地域の歴史的建造物群や自然環境と一体となって、杵築市の歴史と文化を象徴する存在となっています。城山公園では、模擬天守からの眺望だけでなく、法政大学創立者である金丸鉄と伊藤修のレリーフが刻まれた顕彰碑も設置されており、教育機関との関わりも見ることができます。

現在も、発掘調査や保存活動が続けられており、杵築城の歴史は、新たな発見とともに、未来へと継承されていくことでしょう。

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