松井友閑

松井友閑：織田信長の影で活躍した知略と教養の士

松井友閑（まついゆうかん、生没年不詳）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将です。室町幕府に仕えた家系に生まれ、足利義晴、義輝に仕えたのち、織田信長に仕えました。宮内卿法印（正四位下）の官位に叙され、徳庵という庵号で知られています。

織田信長への仕えと京畿の政治

京都郊外の松井城を拠点とした友閑は、永禄の変（1565年）の後、織田信長に仕官します。信長入京後の永禄11年（1568年）からは京畿の政務に携わり、織田氏の右筆として活躍しました。その手腕は、京都や堺の豪商らとの交渉にも及んでおり、名物の茶器などを信長に献上させるなど、政治と経済に精通した人物であったことが伺えます。

信長主催の茶会では茶頭を務めるなど、茶道にも深い造詣を持っていました。天正6年（1574年）の相国寺での茶会や、東大寺正倉院の名香・蘭奢待の拝受における奉行職など、重要な役割を担っています。同時期には堺の代官にも任じられ、豪商・津田宗及らとの親交も深めました。

多岐にわたる外交活動

友閑は財務担当として織田家の内部運営に貢献する一方、外交面でも才能を発揮しました。上杉謙信宛の信長書状に副状を発したり、三好康長の降伏交渉、本願寺との和睦工作、荒木村重や松永久秀の謀反鎮圧に向けた交渉など、数々の重要な外交交渉に携わりました。晩年には、伊達輝宗や大友宗麟といった遠方の大名との外交にも尽力したとされています。

本能寺の変と最期

本能寺の変当時、友閑は堺で茶会を開き、徳川家康をもてなしていました。変の勃発を知ると上洛を試みましたが、途中で断念し、堺の町衆に信長の死を知らせました。その後は豊臣秀吉に接近し、堺代官として活動を続けました。しかし、天正14年（1586年）に不正を理由に突然罷免され、その後の消息は不明です。資料上では、文禄2年（1593年）10月29日までの生存が確認されています。

文化人としての側面

友閑は優れた目利きとしても知られており、鳥丸家、松江宗訥とともに天下三墨蹟の一つとされる無準の墨蹟を所有していました。さらに、武野紹鴎から「相阿弥茶湯書」を伝えられたとされ、茶人、文化人としての側面も持ち合わせていたと言えるでしょう。

まとめ

松井友閑は、単なる武将という枠を超え、政治、経済、外交、文化など、多方面にわたって才能を発揮した人物でした。織田信長の信頼厚く、重要な役割を担いながらも、その生涯には謎も多く残されています。彼の活動は、織田政権の運営や、当時の社会情勢を理解する上で貴重な資料となっています。今後の研究により、その生涯がさらに明らかになることが期待されます。

もう一度検索