松井孝典

松井孝典：惑星科学の Pioneer

松井孝典（1946年3月7日 - 2023年3月22日）は、日本の惑星科学者であり、千葉工業大学の学長、東京大学の名誉教授を歴任しました。彼の専門は固体地球物理学、惑星物理学、比較惑星学であり、日本の惑星科学の分野で大きな足跡を残しました。

人物と業績

静岡県周智郡森町出身の松井孝典は、学際的な地球学を提唱し、その研究は国際的にも高く評価されました。1986年には、英国の科学雑誌『ネイチャー』に「水惑星の理論」を発表し、地球における海の誕生の解明に貢献しました。この理論は、世界の地球科学者から注目を集めました。

また、松井は地球物理学者の上田誠也や地質学者の鎮西清高らと共に、NHKで放送された『地球大紀行』の制作にも深く関わりました。企画段階から参加し、番組の科学的な ভিত্তিを築きました。2007年には、著書『地球システムの崩壊』が第61回毎日出版文化賞（自然科学部門）を受賞しています。

2023年3月22日、前立腺がんにより77歳で逝去。その功績を称えられ、死没日をもって従四位に叙され、瑞宝重光章が追贈されました。

略歴

東京学芸大学附属高等学校卒業
1970年3月：東京大学理学部地球物理学科卒業
1973年3月：東京大学大学院理学系研究科地球物理学専門課程修士課程修了
1976年3月：東京大学大学院理学系研究科地球物理学専門課程博士課程修了、理学博士
1978年6月：東京大学理学部助手
1992年4月：東京大学理学部助教授
1993年4月：東京大学大学院理学系研究科助教授
1999年4月：東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
2009年3月：東京大学退職
2009年4月：千葉工業大学惑星探査研究センター所長
2009年6月：東京大学名誉教授
2010年4月：学校法人千葉工業大学理事
2012年2月：内閣府宇宙政策委員会委員長代理、公立大学法人静岡文化芸術大学理事
2016年1月：学校法人千葉工業大学常務理事
2018年3月：岐阜かかみがはら航空宇宙博物館館長兼理事長
2019年4月：千葉工業大学地球学研究センター所長
2020年6月：千葉工業大学学長

科学技術と宇宙探査への視点

松井は、科学技術政策についても積極的に発言しました。2009年には行政刷新会議に民間有識者として参加し、科学技術関連事業の予算削減議論に携わりました。スーパーコンピュータの開発予算削減に賛同する一方で、宇宙科学研究所の宇宙探査計画には批判的な見解を示していました。彼は「はやぶさ」計画についても、地球への帰還がなければ失敗であるとし、小惑星の画像に高額な価値を見出すことは難しいと述べています。

しかし、自身が学長を務める千葉工業大学の惑星探査研究センターでは、「はやぶさ2」プロジェクトへの協力をアピールしており、その姿勢には議論の余地がありました。

石原慎太郎「ババア発言」に関する見解

石原慎太郎の「ババア発言」に関して、石原が松井の発言を出所と主張したのに対し、松井はそれを否定しました。松井の「おばあさん仮説」は、ヒトの女性が生殖可能年齢を超えて生存することが文明の誕生に貢献したとするものですが、同時に地球環境を蝕む結果をもたらしているというものでした。

鳩山由紀夫への火星儀プレゼント

松井は、鳩山由紀夫首相（当時）に火星の話をすると共に火星儀をプレゼントしたエピソードも残っています。

著作一覧

松井孝典は、数多くの著書を通じて、惑星科学や地球科学の知識を広めました。以下は代表的な著作の一部です。

『惑星探査と生命・惑星の表面』
『パノラマ太陽系』
『青い惑星・地球』
『水惑星はなぜ生まれたか』
『地球進化論』
『宇宙誌』
『地球システムの崩壊』
『宇宙人としての生き方』
『生命はどこから来たのか? アストロバイオロジー入門』
『銀河系惑星学の挑戦 地球外生命の可能性をさぐる』
『文明は〈見えない世界〉がつくる』

これらの著作は、一般読者から専門家まで幅広い層に支持され、地球科学や宇宙科学への関心を高める上で重要な役割を果たしました。

松井孝典は、その研究、教育、そして社会への貢献を通じて、日本の科学界に多大な影響を与えた人物です。彼の業績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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