松井誠 (政治家)

松井 誠

松井 誠（まつい まこと、1912年10月29日 - 1972年11月10日）は、昭和時代に活躍した弁護士であり、政治家です。彼は衆議院議員と参議院議員の両方を歴任しました。

大正元年、現在の新潟県佐渡市の一部にあたる佐渡郡真野村に生を受けました。両親は父の仕事の都合で朝鮮に暮らしていたため、幼い頃は祖父母のもとで育ちました。旧制佐渡中学校（現在の新潟県立佐渡高等学校）を経て第四高等学校に進学し、ここでは首席の栄誉に輝きました。さらに学究を深めるため、東京帝国大学法学部法律学科へ進みました。

大学在学中の1935年には、高等試験の行政科および司法科の両方に合格するという優れた能力を示します。東京帝国大学を卒業した翌年の1936年には、満州国へ渡り、国務院司法部で司法官として働き始めました。しかし、健康を損ない、病気療養のため1940年に官職を退任せざるを得なくなります。義兄が勤務していた京城医学専門学校附属医院での療養を経て、東京帝国大学医学部附属病院に転院。病状が回復した後、1944年に東京の前野法律事務所で弁護士としての第一歩を踏み出しました。

1945年3月の東京大空襲で被災したことを機に、故郷である佐渡に戻ることを決断。佐渡で自らの弁護士事務所を開設し、新たな活動拠点としました。

第二次世界大戦後、松井誠は法曹活動に加え、文化活動や社会運動にも積極的に関与するようになります。佐渡新報社の設立に参画し監査役を務めたほか、真野青年団長として地域の青年活動を牽引しました。また、真野演劇研究会、河原田新劇教室、文芸懇話会といった文化団体の立ち上げにも尽力しました。これらの文化や青年活動を通じ、社会主義運動への関心を深め、その活動に身を投じていきます。

1953年には、演劇仲間と共に左派社会党佐渡支部を設立し、初代委員長に就任します。その後、日本社会党の支部が統一されると、1956年には統一された社会党佐渡支部の支部長を務めることになりました。政治家としての道を本格化させた彼は、まず1955年の新潟県議会議員選挙に挑戦しますが、この時は議席を獲得できませんでした。

国政への足がかりは1958年に始まります。同年5月の第28回衆議院議員総選挙では、新潟県第1区から社会党公認候補として出馬しましたが、惜しくも次点に終わります。しかし、1960年11月の第29回総選挙で再び立候補し、見事に初当選を果たしました。衆議院議員就任後の1961年には社会党佐渡支部長の役職を辞任。1963年11月の第30回総選挙でも連続当選を果たし、衆議院議員として通算2期在任しました。衆議院議員時代には、地方行政委員会、農林水産委員会、裁判官訴追委員会予備員、離島振興対策審議会委員など、多岐にわたる委員会や審議会で委員を務め、国政運営に関わりました。

1966年5月、当時の塚田十一郎新潟県知事の辞任に伴う知事選挙が実施されるにあたり、松井誠は衆議院議員を辞してこの選挙に立候補しましたが、約6万票差で落選という結果に終わりました。その後、佐藤芳男参議院議員の逝去に伴い1967年11月に行われた第7回参議院議員通常選挙の新潟県地方区補欠選挙に出馬しましたが、この時も次点に泣きました。しかし、翌1968年7月の第8回参議院通常選挙に再挑戦し、念願の当選を果たします。これにより、参議院議員として1期、約4年間国政に携わることになりました。参議院では、石炭対策特別委員長、公害対策特別委員長といった特別委員会の委員長職や、大蔵委員会、予算委員会の理事などの要職を歴任しました。また、豪雪地帯対策審議会委員や社会党新潟県本部副委員長も務めました。

1972年4月、松井誠は国会内で職務中に病に倒れます。その後療養に努めましたが、同年11月10日、参議院議員として在任中に惜しくもこの世を去りました。

彼は生涯を通じて、優れた法曹家であると同時に、郷里佐渡の文化振興や社会運動に情熱を注ぎ、そして衆参両院で重要な役職を務めた、まさに昭和期を代表する政治家の一人と言えるでしょう。

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