松倉勝家

松倉勝家

松倉勝家（まつくら かついえ）は、江戸時代前期の大名で、肥前国島原藩の二代目藩主です。初代藩主・松倉重政の嫡男として生まれました。しかし、彼は領国において悪政を敷き、それが島原の乱を引き起こす大きな原因となりました。最終的に、幕府から領国経営の失敗と反乱を招いた責任を問われ、大名としては異例の斬首刑に処せられるという末路を辿りました。

生涯

勝家は、父・重政と共に島原城とその城下町の建設、参勤交代の費用、そして計画のみで終わったルソン遠征の準備など、様々な名目で領民に重い負担を強いました。さらに、独自の検地を行い、実質4万石程度の石高を10万石と過大に見積もることで、領民に10万石相当の年貢や労役を課しました。豪華な島原城をさらに改築し、城を全面白色に塗るなど、その浪費は目に余るものでした。領内に多かったキリシタンへの弾圧もまた、残忍を極めました。

寛永7年（1630年）に父・重政が急逝した後、藩主となった勝家は、父を凌ぐ過酷な収奪を行い、領民を苦しめました。寛永11年（1634年）には悪天候と干ばつによって凶作となりましたが、勝家は容赦なく重税を取り立てました。米や農作物の徴収だけでなく、人頭税や住宅税など、あらゆる税を新設し、厳しく取り立てたことが多くの記録に残っています。

『黒田長興一世之記』によれば、寛永14年（1637年）10月には、口之津村の庄屋・与左衛門の妻が身重のまま人質に取られ、冷たい水牢に裸で入れられるという事件も起こりました。村民が年貢を納めるために話し合うも、もはや何も出すものがありませんでした。庄屋の妻は6日間苦しみ、水中で出産した子供と共に命を落としました。このような状況に耐えかねた領民は、10月25日に蜂起し、代官所を襲撃して代官を殺害しました。これが島原の乱の始まりです。

改易と斬首

乱の鎮圧後、寛永15年4月4日（1638年5月17日）、勝家は肥前唐津藩主・寺沢堅高と共に、反乱を招いた責任を問われました。勝家は改易となり、所領を没収された上、4月12日には美作津山藩主・森長継に預けられました。『嶋原一揆松倉記』によると、屋敷の桶の中から農民と思われる死体が見つかったことが決定打となり、5月には取り調べのため江戸に護送され、同年7月19日に江戸の森家下屋敷で斬首刑に処されました。大名でありながら、武士の名誉である切腹さえ許されず、罪人として斬首刑に処されたのは、江戸時代を通じて勝家ただ一人です。

幕府は、家光の親政が始まって以降、寛永12年（1635年）の武家諸法度において参勤交代の規定を改正し、大名に参勤交代の負担を減らすことを呼びかけていました。また、1640年代前半の寛永の大飢饉への対応を踏まえ、諸大名に対し、百姓の生活向上を重視する政策を推進していました。幕府は勝家を斬首することで、諸大名にとっての反面教師としようとしたのです。

百姓たちは、刀狩以降も多くの武器を保有していましたが、島原・天草一揆以降、百姓一揆を起こす際には武器の使用を自主規制し、幕藩体制を否定しないことを主張しました。そのため、百姓一揆では、鎌などの農具を持って「御百姓」であることを自覚しながら、百姓の権利や生活の保障を幕府や大名に請願しました。

勝家には2人の弟がいました。長弟の重利は讃岐国や陸奥国会津に預けられた後、明暦元年（1655年）に自殺。次弟の三弥は命は助けられたものの浪人となりました。重利の系統は300俵の旗本として存続しています。

松倉勝家の苛政は、島原の乱という大規模な反乱を引き起こし、その結果、大名としての地位を失い、悲惨な最期を遂げたのです。

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