松倉重政

松倉重政：苛政と開発、二つの顔を持つ武将

松倉重政は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけて生きた武将、大名です。その生涯は、領民への苛烈な搾取と、城下町の整備や産業振興という、相反する二つの側面によって彩られています。大和五条藩主、そして肥前日野江藩初代藩主として、激動の時代を駆け抜けました。

生涯：戦国から江戸へ、激動の時代を生き抜く

当初、重政は筒井順慶に仕えていましたが、順慶の死後、豊臣家の直臣となります。関ヶ原の戦いでは徳川家康に味方し、その功績によって大和五条の領主となりました。五条では、商業の振興を図るため諸役を免除するなど、城下町の整備に尽力しました。大坂夏の陣でも武功を挙げ、その後の元和2年（1616年）には、肥前日野江4万3千石を与えられ、大名としての地位を確立しました。

島原城築城と過酷な搾取

元和4年（1618年）、重政は一国一城令に従い、従来の原城と日野江城を廃し、新たに島原城の築城を開始します。しかし、その規模は禄高に見合わないほど大きく、その費用を捻出するため、領民に対して過酷な搾取を行いました。検地を不正に行い、実勢の倍近い石高を算出、領民は限界を超える税を取り立てられることになりました。また、江戸城改築の公儀普請役を請け負い、その費用も領民に負担させるなど、重政の圧政は領民を苦しめました。

この過酷な状況下で、千々石村の和田四郎左衛門義長の訴えにより、海岸に堤防を築き松を植えることで塩害を防ぐことができました。この松は、現在も千々石町の防風林として残っています。

キリシタン弾圧とその残虐性

当初、南蛮貿易の利益を得ていた重政は、キリシタンを黙認していました。しかし、幕府のキリシタン弾圧政策に従い、元和7年（1621年）からはキリシタンの弾圧を開始します。当初は穏やかであったものの、将軍徳川家光から対策の甘さを指摘されると、徹底的な弾圧に転じました。顔に焼き鏝で「吉利支丹」と焼き印を押したり、指を切り落としたりといった残虐な拷問を行い、雲仙地獄で熱湯を用いた処刑も行われました。これらの記録は、オランダ商館長やポルトガル船長の記録にも残されています。

ルソン遠征計画とその頓挫

重政は、キリシタン弾圧への取り組みを幕府にアピールするため、キリシタンの根拠地であるルソンの攻略を幕府に提案しました。自身の領土拡大の野心に加え、スペインによる日本侵略の脅威を主張することで、フィリピン侵略を正当化しようとしました。しかし、当時のスペインは、領土拡大に消極的でした。

将軍徳川家光は、マニラへの日本軍派遣を確約することは控えたものの、重政にその可能性調査と軍備を整えることを許可しました。重政は家来をマニラに派遣し、スペインの守備を偵察させました。しかし、重政自身が遠征実施直前の寛永7年（1630年）に急死したことで、フィリピン侵略計画は頓挫しました。

死後のフィリピン侵略計画

重政の死後も、息子の松倉勝家の代にフィリピン侵略計画は検討されました。遠征軍は1万人規模で想定されましたが、同年に起きた島原の乱によって、遠征計画は実現しませんでした。

評価：二面性を持つ人物

奈良県五條市では、重政は新町地区の礎を築いた名君として「豊後様」と称えられ、感謝する祭りも行われています。一方、長崎県島原市では、島原城の築城や城下町の整備、産業振興に尽力した人物として評価されています。しかし、その一方で、過酷な搾取や残虐なキリシタン弾圧を行った人物としても知られており、その評価は二分されています。

まとめ

松倉重政は、戦国時代から江戸時代初期にかけての激動期を、武将、大名として生きた人物です。その生涯は、領民への過酷な搾取と、城下町の整備や産業振興という、相反する二つの側面を持ち合わせていました。重政の功績と負の側面は、現代においても様々な議論を呼んでおり、その複雑な人物像は、歴史を考察する上で重要なテーマとなっています。

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