松前駅 (北海道)

松前駅（まつまええき）

松前駅は、北海道松前郡松前町字博多にかつて存在した、日本国有鉄道（国鉄）、後に北海道旅客鉄道（JR北海道）松前線の終着駅です。電報略号は「マエ」でした。松前線が地域の重要な交通結節点としての役割を担っていた時代、特に急行「松前」の発着駅として多くの人々に利用され、賑わいを見せました。しかし、時代の流れとともにその役割を終え、松前線全線廃止に伴い1988年2月1日に廃駅となりました。

歴史

松前駅の歴史は、1953年11月8日に始まります。この日、国鉄福山線が渡島大沢駅から当駅まで延伸開業した際に設置されました。同時に福山線はこの区間の延伸開業をもって松前線と改称され、当駅はその一員として一般駅の営業を開始しました。開業から約10年後の1963年12月1日には、準急「松前」の運行が開始され、地域の中心駅としての地位を確立します。1976年には駅舎の改築が行われ、利用環境の向上が図られました。しかし、1980年10月1日のダイヤ改正で急行「松前」が廃止されたことにより、優等列車の停車はなくなります。その後、鉄道貨物輸送の衰退に伴い、1982年11月15日には貨物取扱いが廃止され、1984年2月1日には荷物取扱いも廃止となり、旅客専業駅となりました。国鉄末期の1987年3月16日には、瀬棚線瀬棚駅の廃止により、北海道内で最も西に位置する鉄道駅となります。国鉄分割民営化により、同年4月1日にはJR北海道に承継されましたが、松前線の廃止が決定していたため、JR北海道の駅としてはわずか1年足らずの歴史しかなく、1988年2月1日に松前線全線廃止に伴い、廃駅となりました。

駅名の由来

駅名は、所在地である松前町の地名に由来しています。この「松前」という地名の起源については諸説あります。一つはアイヌ語の「マツ・オ・マイ」に由来するという説で、「婦人のいる所」という意味を持つとされています。もう一つは、江戸時代にこの地を統治した松前氏に由来するという説です。松前氏の氏名についてもさらに二つの説があり、一つは徳川家康の「松」と前田利家の「前」を合わせたものという説、もう一つは、城下の海辺に大きな松の木があり、船がその木を目印に出入りしていたことから名付けられたという説があります。

駅構造

廃止時点の松前駅は、松前線の終端駅として、単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。ホームは線路の南側に配され、松前方面に向かって左手に位置していました。旅客が利用する駅舎側の1番線の北隣には、ホームのない上下副本線である2番線と3番線がありました。3番線からは側線が分岐しており、かつては蒸気機関車のための転車台や炭水線が設けられていた名残が見られました。1番線の線路はさらに引き上げ線として延びており、また駅舎側には西側の切欠き部分にある貨物ホームへ通じる貨物側線も1本存在していました。当駅は職員が配置されており、駅舎は線路の南側、ホームの中央付近に接して建てられていました。駅舎自体は、開業当時の建物の出入口部分が1976年に増改築されたものでした。ホームはアスファルトで舗装されていました。また、鉄道ファンに人気の「わたしの旅スタンプ」が設置されていました。興味深いことに、当駅からさらに松前町大島地区への鉄道路線延伸計画があり、その未成線の橋脚の一部が現在も残されています。

利用状況

松前駅の利用状況を示すデータとしては、1981年度（昭和56年度）における1日の平均乗降客数が425人という記録が残されています。これは廃止約7年前のデータであり、廃止までの間に利用状況は変動した可能性がありますが、一定の利用者があったことを示しています。

駅跡

松前駅が廃止されて以降、駅跡の様子は時代とともに変化しています。1999年の時点では、路線廃止前から存在していた「北海道最南端の町 松前駅」と刻まれた石碑と、当時の駅前商店がまだ見られました。2010年になっても石碑は残っており、加えてホームの一部も原形を留めていました。2011年の調査では、旧駅構内は整備され、駐車場や広場として利用されていることが確認されています。この時、旧観光案内所や観光案内板も残されていました。駅の及部駅側にあった松前トンネルについても、その坑口の現状が記録されています。1999年時点では及部側の坑口は確認できなくなっていましたが、松前側の坑口はトンネル周囲の石垣に似た石組みによって塞がれていました。この松前側の坑口は、2010年および2012年の調査時点でも同様の閉鎖された状態でした。

エピソード

松前駅は、かつてテレビドラマの舞台ともなっています。1973年に放送された子供向け特撮テレビドラマ『走れ!ケー100』の第27回「機関車は櫓で行くギッチラコ（松前の巻）」（同年10月12日放送）で当駅が登場しました。劇中では、主人公の友人である紋太が、東京へ帰る節子を見送るために、相棒の機関車ケー100に乗って松前駅に駆けつけますが、すでに列車（キハ20系気動車）は動き始めており、見送りが間に合わないという印象的な場面で使用されました。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道）松前線
及部駅 - 松前駅

松前線（未成区間計画）
松前駅 - 館浜駅（計画上の駅名）

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