松原操

松原 操（まつばら みさお）の生涯と業績

松原操は1911年3月28日、北海道の小樽市で生まれました。彼女は東京音楽学校を卒業し、1933年にコロムビアのオーディションに合格。デビュー当初は「ミス・コロムビア」という名で活動し、覆面歌手として知られる存在となりました。彼女のデビュー曲『浮草の唄』は、当時の流行歌として多くの人々に愛されました。

1933年には、映画『十九の春』の主題歌を歌い、大ヒットを記録。この成功により、松原は名実ともに人気流行歌手としての地位を確立しました。続くヒット作には、『秋の銀座』や『並木の雨』などがあり、彼女は美声と魅力的な容姿で観客を魅了しました。

しかし、1936年には心身の不調により療養生活を余儀なくされ、その後の復帰には期待が寄せられました。1937年に復帰し、ヒット曲『ふんなのないわ』で再び注目を浴びました。この期間中、松原は女性歌手の一大イベントであるNHKの音楽番組『鶯の競演』にも出演し、歴史的な瞬間に立ち会ったこともありました。

日中戦争の影響もあって、戦時歌謡が増え、松原は『婦人愛国の歌』や『兵隊さんよありがとう』など、戦時歌謡を歌う機会が多くなりました。これらの曲は、当時の世情を反映しつつ、多くの人々に親しまれる曲となりました。

1938年には映画『愛染かつら』での共演をきっかけに、霧島昇と出会い、二人は音楽的なパートナーシップを深めていきました。この映画の主題歌として歌われた『旅の夜風』や『悲しき子守唄』は大ヒットし、松原のキャリアにおいても重要な位置を占めました。彼女が演じた吹き替えも話題となり、多くの観客が田中絹代が歌っていると思い込むほどでした。

1939年末、松原操は霧島昇と結婚しました。この結婚年は、松原にとってもターニングポイントとなり、家庭と歌手としての活動を両立させるために新たなスタートを切りました。「結婚したら人気が落ちる」という通説を覆すように、戦後も多くのヒットを生み出しました。『目ン無い千鳥』や『愛馬花嫁』などがその例です。

1940年以降、内務省からの指令によりカタカナ名の使用が制限され、松原は本名での活動を余儀なくされましたが、それでも活躍は続きました。1948年には夫と共同で『三百六十五夜』のレコーディングを行ったのが最後の作品となり、引退を決意しました。

彼女はその後、家庭に専念し、歌手としての舞台からは遠のきました。1981年には、霧島昇の45周年記念作品に参加し久々のレコーディングを果たすも、数年後には霧島を亡くし、深い悲しみに包まれました。1984年には自身も病に倒れ、73歳でこの世を去りました。霧島昇と同じ場所に眠ることが運命づけられた彼女の生涯は、流行歌界の一時代を象徴するものでした。彼女の長男と三女は、今も両親の歌を継いで歌い続けています。

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