松岡好一

松岡好一：激動の時代を駆け抜けたジャーナリスト

松岡好一（まつおか こういち）は、1865年に信濃国安曇郡二木村（現在の長野県安曇野市）に生まれ、1921年6月29日に病没した明治時代のジャーナリストです。激動の時代にあって、社会問題への告発、南洋での拓殖事業、そして日中親善と、多岐にわたる分野でその足跡を残しました。

苦難の幼少期と自由民権運動への参加

幼少期に両親を亡くした松岡は、叔父に育てられました。伊那郡飯田町（現在の長野県飯田市）で漆器店に奉公した後、15歳で上京し、榊原鍵吉に入門。その後、母方の従兄である松沢求策の自由民権運動に共鳴し、東洋自由新聞の活動や八丈島での事業を支援、小笠原諸島では小学校の教諭を務めました。この頃から、社会に対する問題意識と行動力が芽生えていったと考えられます。

炭鉱労働の実態告発と金玉均との交流

三菱高島炭鉱で働いた経験は、松岡のジャーナリストとしての活動を決定づける出来事でした。彼は、坑内労働者が置かれた過酷な状況を1888年に雑誌『日本人』に告発。この記事は大きな反響を呼びましたが、犬養毅が『朝野新聞』でこれを否定したため、論争に発展しました。また、この頃、朝鮮からの亡命者である金玉均と交流したことも、松岡の思想形成に影響を与えたと考えられます。

南方移民推進とオーストラリア領事館開設への貢献

1891年、外務大臣榎本武揚の意を受け、松岡は日本の人口過多問題解決のため、南方移民推進政策に取り組みました。軍艦「比叡」に乗組んで南洋を航海し、オーストラリアでの領事館開設の必要性を痛感。政府に要望した結果、タウンズビルに領事館が設置されることとなりました。その後、木曜島に渡り、日本居留民団長として拓殖事業に従事しました。

日中親善への尽力と晩年

1897年、香港に渡った松岡は、旅館「日本館」を経営し、日中親善に尽力しました。宮崎滔天や平山周らと中国問題を議論し、康有為の『知新報』の客筆も務めました。台湾総督府の依嘱を受け、機密通信事業に従事するなど、政治活動にも関わりました。その後、日刊新聞『南国報』を発行するため帰国しましたが、1921年に神戸で病没しました。

松岡好一は、激動の時代にあって、様々な分野で活躍した人物でした。社会問題への告発、南方での拓殖事業、そして日中親善への貢献は、今日の私たちにとっても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

参考文献

『南安曇郡誌』
掛川愛遊『信濃風物記』

外部リンク

* 松岡好一 安曇野ゆかりの先人たち

もう一度検索