松岡孝

松岡孝氏は、日本の放送作家として、特にコメディ番組の分野で長年にわたり活躍してきました。

日本大学芸術学部放送学科を卒業後、大学時代の恩師である塚田茂氏が設立した「スタッフ東京」に立ち上げから参画しました。この時の同期には、後に放送作家・タレントとして名を馳せる高田文夫氏がいました。スタッフ東京では、塚田氏から番組構成に関する幅広い知識やノウハウを吸収し、放送作家としての基礎を築きました。

そして1981年、「スタッフ東京」から独立。フリーランスの放送作家として、その才能を開花させます。特に注目されたのは、国民的な人気番組であったTBS系列の「8時だョ！全員集合」の構成に携わったことです。番組の中心人物であったいかりや長介氏から厚い信頼を得て、コントのアイデアや構成においてその実力をいかんなく発揮しました。この時期、フジテレビ系列の「クイズドレミファドン！」をはじめとする数多くのヒット番組にも関与し、多忙な日々を送ります。

「8時だョ！全員集合」が終了した後、1986年にスタートした後継番組であるTBS系列「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」では、放送作家チームの中心的メンバーとして番組を支えました。さらに、志村けん氏がフジテレビ系列で自身の冠番組「志村けんのだいじょうぶだぁ」を立ち上げる際にも、チーフライターとして深く関わりました。ザ・ドリフターズや志村けん氏が生み出した数々のコントやギャグの中には、松岡氏の発想によるものが非常に多く、コント作家としてはテレビ業界の第一人者と目される存在となりました。その後も、主に志村けん氏の出演する番組を中心に、第一線で放送作家としての活動を続けています。

作家活動の一方で、松岡氏は番組制作の現場で独創性を持った若い人材が不足している現状を憂いていました。この状況を打開するため、自ら新しい才能を発掘し、育成することを決意します。その具体的な取り組みとして、社会人や学生といったマスコミ業界を志す人々向けの講座『テレラジ・エリートセミナー』の設立を発案しました。このセミナーは、声優としても著名な大山のぶ代氏が学校長を務める音響芸術専門学校で開講され、松岡氏自身が主任講師とナビゲーターを兼任しながら、熱心に指導にあたっています。

松岡氏が構成を担当した代表的なテレビ番組には、前述の番組のほかにも、

「笑アップ歌謡大作戦」
「夜のヒットスタジオ」
「ひるのプレゼント」
「志村けんのバカ殿様」
「噂のどーなってるの?!」
「こたえてちょーだい!」
* 「発掘!あるある大事典」

など、多岐にわたります。また、テレビ番組以外では、1979年公開の東宝映画「ピーマン80」の脚本も手がけています。著書としては、テレビ番組の企画術について記した『テレビ作家がマジメに書いたヒット企画の方程式』（実業之日本社）を執筆しています。

ユニークなエピソードも知られています。自身でカニ料理店を開業した際の開店パーティーでは、訪れたビートたけし氏が冗談で食中毒を装ったところ、周囲が本気にしてしまい大騒ぎになったといいます。また、松岡氏自身はタレントではありませんが、その親しみやすいコミカルな風貌や東北弁が好まれ、俳優の山城新伍氏とテレビCMで共演した経験もあります。

もう一度検索