松平乗邑

松平 乗邑（まつだいら のりさと）の生涯と業績

松平乗邑は、江戸時代中期において重要な役割を果たした大名であり、老中として幕府の運営に深く関与しました。彼は肥前国唐津藩の第3代藩主であり、後には志摩国鳥羽藩、伊勢国亀山藩、山城国淀藩、さらには下総国佐倉藩の初代藩主を務めた各藩の支配者でもありました。大給松平家宗家の10代目にあたります。官位は従四位下・侍従に叙任されています。

生い立ちと家督相続

松平乗邑は、唐津藩の第2代藩主である松平乗春の長男として生を受けました。1690年、元禄3年に父が死亡したことにより、彼は家督を相続しました。若い頃から彼は公務に従事し、1711年には近江国守山において朝鮮通信使の接待を行いました。

政治的役割と享保の改革

享保8年（1723年）、乗邑は老中に任じられ、下総国佐倉に転封されました。その後の約20年間、彼は徳川吉宗の下で享保の改革に尽力しました。特に、「足高の制」と呼ばれる制度の提案や、勘定奉行の神尾春央との協力による年貢の増徴、公事方御定書の制定などに貢献しました。これらは幕府成立以来の法律の集成であり、政治運営における重要な基盤となりました。

吉宗が将軍として強権を行使する中、乗邑は農政や財政を管理する立場にありました。元文2年（1737年）、彼は勝手掛老中の職に就き、財政全般を掌握する責任を負いました。この時期、御側御用取次と呼ばれる実務官僚らが政策決定に関与していましたが、乗邑は老中として、この流れに対してやや異を唱える姿勢を見せました。彼の主導の下、関東地方の政策案件に関しては、彼が直接報告を受けるように求める場面もありました。

後期の政治動向と失脚

享保の改革の初期においては重要な地位を確保していた乗邑でしたが、次第に吉宗の政策と対立するようになります。家重を次期将軍に擁立する意向を持っていた彼でしたが、最終的には家重が将軍に選ばれる過程で疎外され、1745年には老中から解任されることとなりました。これに伴い、彼の持っていた権力は急速に減退しました。

最後の年と死去

1746年、乗邑は61歳でその生涯を閉じました。彼の死は、江戸時代中期の混沌とした政治情勢と多くの困難な決定を象徴するものでした。その後、彼の次男は家督相続を許されたものの、転封命令を受けるなど、家系は波乱の歴史を辿りました。

年表で見るその歩み

• - 1690年（元禄3年）11月10日 - 家督相続（肥前国唐津6万石）
• - 1701年（元禄4年）2月9日 - 志摩国鳥羽に転封
• - 1710年（宝永7年）1月26日 - 伊勢国亀山に転封
• - 1717年（享保2年）12月 - 山城国淀に転封
• - 1730年（享保15年）6月12日 - 老中首座となる
• - 1745年（延享2年）10月10日 - 老中地位を失い隠居
• - 1746年（延享3年） - 死去

乗邑はその生涯を通じて、江戸幕府の政治と経済に大きな影響を与えただけでなく、享保の改革においても重要な役割を担いました。彼の業績は、近世日本の歴史に刻まれており、その評価は今なお語り継がれています。

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