松平康哉

松平 康哉（まつだいら やすちか）

松平康哉は、江戸時代中期における美作津山藩の第五代藩主として知られる人物です。官位は従四位下・越後守、侍従、さらには死後に贈られた従三位を持つなど、彼の政治的地位は非常に高かったと言えます。彼の生涯は、政治的改革と社会福祉の拡充に尽力したことで特筆されます。

生い立ちと藩主継承

康哉は宝暦2年（1752年）4月19日に、第四代藩主・松平長孝の長男として生まれました。康哉が藩主となるきっかけは、宝暦12年（1762年）に父が急死したことです。父・長孝の施策は新法に基づく藩政改革を目指しましたが、彼の若死にも影響し、結果としてあまり成功を収められませんでした。

康哉は父の後を継ぎ、彼が中断した藩政改革を改めて進めることにしましたが、従来の旧法を根底に据えた姿勢を維持しました。名君と称された上杉治憲や細川重賢の流儀を模倣し、優秀な人材を藩政に起用する方針を掲げたのです。彼は特に社会福祉的な政策を重視し、孝行者への褒賞や育児法の制定など、藩民の生活向上を図る施策を行い、大きな成果を上げました。

天明の大飢饉とその影響

しかし、康哉の治世は天明3年（1783年）に発生した天明の大飢饉によって脅かされました。この飢饉により米価が急騰し、領内では不安からくる打ちこわしの事例も発生しました。こうした危機を乗り越えることで、康哉はさらに評価されることになりますが、その国民への負担は少なくなかったと言えます。

死と功績

寛政6年（1794年）8月19日に43歳で死去した康哉は、次男の康乂に藩主の座を譲りました。彼の死後、明治43年（1910年）に従三位が追贈され、その功績が後世に伝えられました。康哉と親交のあった幕府老中・松平定信は、彼の博学や人柄を高く評価し、その著書の中に「人となり博学弁才無双」と記しています。このように彼は当時の社会においても重要な影響力を持つ人物として位置づけられています。

家族と系譜

康哉は家庭においても複雑な系譜を持っていました。正室は井伊直幸の娘であり、側室には藤井氏、柴田久悦の娘、池田氏、井岡氏がいました。子供には長男の仙千代、次男の康乂、五男の信行、三男の斉孝、四男の維賢、七男の富丸などがいます。特に康乂は若くして亡くなりますが、後の子孫にまで影響を及ぼしました。康哉の家族とその子孫は、江戸時代の日本の歴史において重要な役割を果たしました。

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