井伊直幸

井伊直幸：彦根藩主として、大老として

井伊直幸（いい なおひで）は、江戸時代中期から後期にかけての大名であり、近江彦根藩の第13代藩主として知られています。また、江戸幕府においては大老という要職を務めました。井伊直亮、井伊直弼らの祖父にあたります。

生涯

享保14年（1729年）に井伊直惟の次男として生まれた直幸は、幼少の頃に父を亡くし、家督は叔父の直定が継ぎました。その後、兄の直禔が直定の養子となりますが、急逝したため、幕府の意向により直幸が養子となり、宝暦5年（1755年）に藩主となりました。

藩主となった直幸は、幕府の要職を歴任します。宝暦9年（1759年）には、将軍徳川家重の右大臣転任に伴い、朝廷への使者を務めました。この人選は、幕府内での序列を考慮したものであったと推測されています。その後も、徳川家治の将軍宣下の際にも使者を務め、左少将に任官するなど、官位の上昇を目指しました。

明和2年（1765年）には、徳川家康の150回忌に際し、日光東照宮へ将軍の名代として参詣しました。安永7年（1778年）には正四位上に昇進し、天明4年（1784年）には大老に任命されました。大老在任中は、実子の直富が藩政を執り行い、天明の大飢饉においては、領内に施粥場を設けるなど、領民の救済に尽力しました。

しかし、幕政においては田沼意次との関係が噂され、賄賂を積んで大老の座を手に入れたという噂もありました。天明6年（1786年）に将軍家治が死去すると、次の権力の座を狙いましたが、政争に敗れ、天明7年（1787年）に大老職を辞することとなりました。

寛政元年（1789年）に61歳で死去し、世田谷の豪徳寺に葬られました。跡は六男の直中が継ぎました。

人物

直幸は、文芸にも造詣が深く、絵画や書を残しています。また、天明の大飢饉においては、領民の救済に尽力するなど、領主としての責任を果たしました。

官位

1754年（宝暦4年）：従四位下侍従玄蕃頭
1755年（宝暦5年）：掃部頭
1760年（宝暦10年）：少将
1763年（宝暦13年）：従四位上
1765年（明和2年）：中将
1778年（安永7年）：正四位上

系譜

父：井伊直惟
母：堀部氏
養父：井伊直定
正室：井伊直存娘

直幸は、大名として、また大老として、多岐にわたる活動を行いました。その生涯は、江戸時代中期における政治や文化の一端を垣間見ることができる貴重な資料と言えるでしょう。

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