松平近栄

松平近栄（まつだいら ちかよし）

松平近栄は江戸時代前期から中期にかけて活躍した大名であり、出雲広瀬藩の初代藩主として知られています。彼は松江藩初代藩主松平直政の次男であり、広瀬松平家の祖でもあります。近栄が名付けの由来となった「近」という字は、彼の甥である松平綱近から受けたとされていますが、その正確な情報は確認されていません。

生涯のあゆみ

松平近栄は寛永9年（1632年）に、出雲松江藩初代藩主松平直政の子として誕生しました。彼の人生は、さまざまな家族関係や出来事によって影響を受けました。明暦元年（1655年）には、大野藩主である叔父松平直良の婿養子となり、次期藩主としての地位を約束されましたが、直良の実子直明が誕生したことにより、寛文6年（1666年）に兄から3万石を取り分けられ、独立した藩として広瀬藩を成立させました。最初の支給方法は蔵米によるものであったと言われています。

藩主としての近栄は、親族である越後高田藩で起こった御家騒動に際して、松平直矩と共に調停に当たりました。しかし、この調停活動が後に将軍徳川綱吉の機嫌を損ねることとなり、近栄は閉門処分を受けて所領を1万5000石に減らされてしまいました。後に所領は3万石に戻りましたが、この出来事は彼の藩政に一定の影響を及ぼしました。

近栄は藩政において確かな手腕を発揮し、文武両道を重んじる政策を推進しました。彼の統治下では、領民の福祉を重視した善政が敷かれ、広瀬藩の発展に寄与したと言われています。寛文9年（1669年）には、東京都渋谷区にある祥雲寺塔頭の瑞泉山霊泉院を建立し、精神的な拠り所を地域に提供しました。

近栄の人生の終わりは、元禄15年（1702年）に家督を長男の近時に譲り、隠居生活に入った時期に訪れます。その後、享保2年（1717年）に86歳でこの世を去りました。彼の生涯は、広瀬松平家のみならず、当時の江戸時代の政治や社会においても重要な位置を占めています。

家族について

近栄の家族についても触れておくことが重要です。彼の正室は松平直良の娘である満姫であり、彼らの間に生まれた子どもたちも歴史に名を刻んでいます。長女の繁姫は田村建顕の正室となり、次女の富姫は戸田光正の妻となりました。また、長男の近時が家督を継ぎ、さらに養子に万姫を迎えるなど、家族間でのつながりが強調されていました。

松平近栄の業績や家族の構成は、江戸時代の大名社会において重要な意味を持ち、後の世代にまで影響を与え続けたことでしょう。

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