松平頼孝

松平頼孝（まつだいら よりなり）は、1876年6月7日に生まれ、1945年8月11日に没した、日本の鳥類学者、収集家、そして子爵でした。

生涯

常陸石岡藩主であった松平頼策の子として生まれた頼孝は、1886年11月1日に子爵を襲爵しました。幼少の頃から動物に深い関心を持ち、主猟官に任じられたことをきっかけに、鳥類の研究に情熱を注ぎ込むようになりました。

東京帝国大学理科大学動物学科に聴講生として在籍し、飯島魁教授の指導を受けました。1912年には、日本鳥学会の設立に参加するなど、日本の鳥類学の発展に貢献しました。

1916年、東京市小石川区の自邸に標本館を建設し、標本の収集に没頭しました。日本産の鳥類全種類の標本収集に留まらず、アメリカやニューギニアに代理人を派遣し、海外の鳥類の標本も蒐集しました。その結果、学術的に非常に価値の高い、膨大なコレクションを築き上げました。また、鳥類標本の収集以外にも、カニ類の標本やマッチのラベル、切手の収集にも情熱を燃やしました。鳥類学者としては、オオトウゾクカモメやクロウミツバメの発見に貢献しました。

しかし、標本の蒐集や剥製作りに過剰な資金を費やした上、投資の失敗、遊蕩、知人からの裏切りなどが重なり、1926年に破産してしまいます。その結果、2700坪の邸宅と1万坪の所有地を売却せざるを得なくなり、剥製2000点、学術用半剥製1万7000点にのぼる貴重なコレクションは、鷹司信輔、山階芳麿、蜂須賀正氏といった人々の手に分割売却されることになりました。また、同時期に右目を失明するという不幸にも見舞われています。

その後は、鳥類の研究からほとんど手を引きましたが、晩年は息子や孫の勧めで、チョウの生態研究に情熱を傾けました。そして、終戦のわずか4日前に、胃潰瘍のため69歳で生涯を閉じました。

栄典

1896年（明治29年）6月20日 - 従五位
1914年（大正3年）7月10日 - 正四位
1945年（昭和20年）1月15日 - 御紋付木杯

家族

妻の治子は、公爵徳大寺実則の四女です。妻の姉である順子は、鷹司信輔の母にあたります。長男の松平頼則は作曲家として知られています。また、孫の松平頼暁も作曲家であり、生物物理学者、立教大学教授として活躍しました。

まとめ

松平頼孝は、日本の鳥類学の発展に大きく貢献した人物であり、そのコレクションは日本の学術史上重要な意義を持っています。しかし、晩年は不遇であり、その波乱に満ちた生涯は、多くの教訓を与えてくれます。

出典

科学朝日編『殿様生物学の系譜』（朝日新聞社、1991年）

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