松戸映画劇場

松戸映画劇場

松戸映画劇場（まつどえいがげきじょう）は、かつて千葉県松戸市に存在した映画館である。国鉄（現在のJR東日本）常磐線松戸駅の西口近く、現在の松戸市本町3番地にあたる場所に位置し、およそ40年にわたる歴史を刻んだ。

開館から戦前

この映画館は1928年（昭和3年）頃、松竹館（しょうちくかん）として産声をあげた。創業者は宮田仁輔である。当初の名称から松竹キネマ作品を上映していたと思われがちだが、資料によると、開館当時は帝国キネマ演芸の作品を上映していたという記述も存在する。しかし、同時期に市内にあった松戸常盤館（現在の本町16番地4号付近に位置し、当時は帝国キネマ系だったとされる）が松竹系に移行するのと入れ替わるように、松竹館は日活系の作品を多く上映するようになった。このため、「日活松竹館」や「松戸松竹館」とも通称されたという記録が残っている。木造二階建ての建物で、1942年（昭和17年）から1943年（昭和18年）にかけての資料によれば、観客定員数は511名であった。

昭和初期の松戸町内には、大正時代から存在した松戸常盤館に加え、この松竹館が開館したことで映画館が複数存在するようになった。1939年（昭和14年）頃からは、森本吉太郎が映画館経営に乗り出し、やがて松竹館（後の松戸映画劇場）と松戸常盤館の両館の経営権を取得したとされる。1942年、第二次世界大戦の戦時統制が強化され、国内の映画配給は社団法人映画配給社によって一元化された。映画館も紅系と白系の二つの系統に組み込まれたが、当時の資料には松戸館がどちらの系統に属していたかの明記はない。この時期、松戸館の支配人を岩上米吉が務めていたことが確認されている。1943年（昭和18年）10月1日には、所在地である東葛飾郡松戸町が市制を施行し、松戸市となった。

戦後と閉館

終戦後、経営者である森本吉太郎は、休止状態にあった松戸館と松戸常盤館の復興に尽力し、営業を再開させた。そして、1949年（昭和24年）頃までに、松戸館は「松戸映画劇場」と名称を改めた。1955年（昭和30年）3月には、森本は個人経営だった映画館事業を法人化し、森本興業株式会社を設立した。

1950年代後半から1960年代にかけて、松戸市内の映画館事情は変化を迎える。1959年（昭和34年）には、近隣に輝竜会館大映劇場（後の松戸輝竜会館）と輝竜会館バンビ劇場が開業し、市内の映画館は4館となった。当時の松戸映画劇場は洋画を上映していたとされるが、1962年（昭和37年）頃には再び名称が変更され、「松戸東映劇場」となった。これにより、主に東映作品を上映する映画館として営業を続けた。

しかし、この映画館は長くその歴史を続けることはなかった。1970年（昭和45年）頃、松戸東映劇場はその幕を閉じた。閉館後、森本興業が経営していたもう一つの映画館、松戸常盤館が東映系の興行を引き継ぎ、1992年（平成4年）まで営業を続けた。1970年代前半には、松戸京葉劇場や松戸弁天劇場といった成人映画館が開館するなど、松戸市内の映画館の顔ぶれは時代と共に移り変わっていった。

松戸映画劇場は、その存在した期間に名称と上映系統を何度か変更しながらも、松戸駅近くの映画館として地域に親しまれ、昭和の映画文化の一端を担ったのである。

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