松本三之介

松本三之介

松本三之介（1926年2月22日 - ）は、日本の著名な政治学者であり、近代日本政治思想史研究の泰斗として知られています。東京大学名誉教授の称号を持ち、日本の政治思想研究に多大な貢献をしてきました。

来歴と学問的背景

茨城県出身の松本は、旧制静岡高校を経て1948年に東京大学法学部を卒業しました。東京大学では、著名な政治学者である丸山真男に師事し、その薫陶を受けました。丸山真男の指導の下で、松本は政治思想史研究の基礎を築き、独自の学問的視点を培いました。

大学卒業後、松本は大阪市立大学法学部助教授（現在の准教授）として教鞭を執りました。その後、1964年に東京教育大学文学部教授に就任し、研究・教育活動を精力的に展開しました。1975年には、母校である東京大学法学部教授に迎えられ、後進の育成に尽力しました。東京大学退官後は、駿河台大学法学部教授を歴任し、長年にわたり政治学の研究と教育に携わりました。

松本の研究は、丸山真男の近世政治思想史研究を受け継ぎ、近世国学や明治期の法思想などの分析に焦点を当てました。特に、天皇制国家と政治思想、明治思想における伝統と近代、近代日本の中国認識など、多岐にわたるテーマに取り組み、近代日本の思想的構造を解明しようと試みました。また、東京大学における丸山講座の後継者として、その学問的遺産を継承し、発展させました。門下からは、坂本多加雄など、多くの優れた研究者が育っています。

著書

松本は、数多くの著書を発表しており、その研究成果は高く評価されています。主要な著書としては、『国学政治思想の研究――近代日本政治思想史序説』（1957年）、『近代日本の政治と人間――その思想史的考察』（1966年）、『天皇制国家と政治思想』（1969年）、『近代日本の知的状況』（1974年）、『日本政治思想史概論』（1975年）、『明治精神の構造』（1981年）、『近世日本の思想像――歴史的考察』（1984年）、『明治思想における伝統と近代』（1996年）、『明治思想史――近代国家の創設から個の覚醒まで』（1996年）、『近代日本の思想家（11）吉野作造』（2008年）、『近代日本の中国認識―徳川期儒学から東亜協同体論まで』（2011年）、『「利己」と他者のはざまで─近代日本における社会進化思想』（2017年）などがあります。これらの著書は、近代日本の政治思想史研究における重要な貢献として、広く読まれています。

編著

松本は、編著も数多く手がけており、共同研究や資料集成など、多岐にわたる活動を行っています。主要な編著としては、『日本の百年（2） わき立つ民論 1877-1889』（1963年）、『日本の百年（3） 強国をめざして 1889-1900』（筑摩書房）、『思想の歴史（11）胎動するアジア』（1966年）、『現代日本思想大系（1） 近代思想の萌芽』（1966年）、『日本の名著（31） 吉田松陰』（1973年）、『近代日本思想大系30・31・32 明治思想集Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』（1976・1977・1990年）、『明治文学全集（37）政教社文學集』（1980年）などがあります。これらの編著は、近代日本の思想研究における重要な資料を提供し、研究の発展に貢献しています。

共編著

松本は、橋川文三、小倉芳彦、芳賀登、山室信一らと共同で、近代日本政治思想史、日本思想大系、勝海舟全集、中江兆民全集などの編纂にも携わりました。これらの共同研究は、学問的な交流を促進し、研究の幅を広げる上で重要な役割を果たしました。

松本三之介は、長年にわたり近代日本政治思想史研究の第一線で活躍し、多くの研究者や学生に影響を与えてきました。その学問的貢献は、今後も長く評価され続けるでしょう。

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