松本准平

松本准平は、1984年12月4日に長崎県西彼杵郡で生まれました。カトリックの家庭で育ち、幼少期からキリスト教の影響を強く受けました。子供の頃は手塚治虫と藤子・F・不二雄の漫画を愛読し、特に藤子には自作の漫画を送り続けたところ、年賀状で返事が来たというエピソードがあります。この体験が、彼にとってクリエイティブな行為から幸福を得られる原点になったと語っています。

中学時代はバスケットボール部に所属していましたが、高校生になると、バラエティ番組を観ることを禁じられていたにもかかわらず、偶然観た『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』に衝撃を受けました。特に松本人志に強く惹かれ、彼の出演番組をすべて録画して研究する日々を送ったそうです。大学時代にはお笑い芸人を志し、吉本総合芸能学院（NSC）東京校に12期生として入学しましたが、教官から「アホなふりをしているだけだ」と指摘され、挫折を味わいました。同期には、渡辺直美やジャングルポケットなどがいます。

大学在学中の2007年、友人とNPO法人AOAを設立し、杉並区の成人式用動画『ほころび』を制作したことが、映画制作を始めるきっかけとなりました。2008年に東京大学大学院を卒業後、テレビ制作会社に就職しましたが、企画を提出し続けたことが原因で上司からいじめを受け、うつ病を患ってしまいます。2012年には、監督映画『まだ、人間』で劇場デビューを果たしました。

2014年には、芥川賞作家・中村文則の原作を映像化した『最後の命』を発表しました。この作品は、NYチェルシー映画祭でグランプリノミネーションと最優秀脚本賞をW受賞し、コンペ部門で日本映画初の快挙を成し遂げました。映画化にあたっては、原作者の中村と主演の柳楽優弥に、直筆で映画化の承諾と主演を求める手紙を書いたというエピソードがあります。2017年には、実話を基にした『パーフェクト・レボリューション』を公開し、第25回レインダンス国際映画祭に正式出品されました。この作品の撮影中には、監督の不可解な言動が、出演者から「怖い」と評されたり、「情緒不安定」と評されたりしたという逸話も残っています。2019年には、初の長編小説『惑星たち』を上梓し、同年には第76回ヴェネチア国際映画祭でSIGNIS賞審査員を務めました。また、2020年にはTVアニメ『シャドウバーズ』のプロデュースを手掛け、2022年には映画『桜色の風が咲く』を公開しました。2023年4月には、『桜色の風が吹く』が第47回日本カトリック映画賞を満場一致で受賞しています。

松本監督の作品は、愛、家族、罪、生といったテーマを深く掘り下げており、独特の幻想的な世界観を持つ映像が特徴です。『まだ、人間』については、「不条理の多い現代の中で今を肯定するきっかけになれば」と語っています。『最後の命』では、ドストエフスキーのファンである松本監督が、原作者の中村と「矛盾を抱えた、ふわふわした心の状態の人物像」という共通のテーマをエンターテイメント化しています。『パーフェクトレボリューション』は、子供が生まれた時期に制作されたことから、初めて人のために作ったという点で革命的な作品だと述べています。

また、かつて催眠術を学んでいた経験から、リハーサルではゲシュタルト療法から引用したエンプティチェア（空の椅子）技法を用いることがあります。この手法では、目の前の空の椅子に役の人物を想像上で座らせ、その人物に自己紹介をさせますが、役者から思いがけない言葉が引き出されるといいます。

松本准平監督は、映画監督としてだけでなく、小説家、プロデューサーとしても活躍しており、その多才な才能を発揮しています。

監督作品

映画
『まだ、人間』（2011年）
『最後の命』（2014年）
『パーフェクト・レボリューション』（2017年）
『桜色の風が咲く』（2022年）
テレビドラマ
『ふたりモノローグ』（2017年）- プロデューサー
アニメ
『シャドウバーズ』（2020年）- プロデューサー
その他
『ほころび』（2007年） - 杉並区成人式記念上映
『デーアフターつもろー』（2008年・短編） - 出演
『エデン』（2010年）
『NEWS23 蛙男劇場』（2009年11月-2010年3月・監督｜FROGMAN） - 脚本補佐

受賞歴

第2回 NYチェルシー映画祭 最優秀脚本賞・グランプリノミネーション（『最後の命』）
第42回 日本カトリック映画賞 特別賞（『パーフェクト・レボリューション』）
第47回 日本カトリック映画賞 受賞（『桜色の風が吹く』)

著作

『惑星たち』（2019年8月、書肆侃侃房）

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