松本幸四郎 (4代目)

四代目松本幸四郎：江戸歌舞伎を彩った名優の生涯

四代目松本幸四郎（1737年-1802年）は、江戸時代を代表する歌舞伎役者の一人です。屋号は高麗屋、俳名は錦江と称しました。京都で生まれ、若くして江戸で初舞台を踏みます。当初は若衆役として活躍しましたが、その後、立役へと転身。様々な役柄に挑戦し、確かな地位を築き上げていきました。

彼のキャリアは順風満帆とは言い難く、幾多の困難や葛藤がありました。若手時代は、初代市川團十郎に入門し、師の主催する養成塾で研鑽を積みました。そこで培った演技力は、やがて彼を初代市川染五郎、そして二代目市川高麗蔵へと導きます。そして、1772年（安永元年）、中村座での『大鐙海老胴篠塚』で、ついに四代目松本幸四郎を襲名したのです。

幸四郎は時代物、世話物問わず、幅広い役柄をこなせる実力派でした。特に、天川屋義兵衛や幡随院長兵衛といった男伊達役、そして絹川谷蔵のような力士役を得意としていました。持ち前の研究熱心さから、役作りには並々ならぬ努力を注ぎ、その演技は高く評価されました。

しかし、その強い個性ゆえに、他の役者との衝突も少なくありませんでした。特に有名になったのは、初代尾上菊五郎との確執です。舞台上で起きた激しい口論や小道具の投げつけ合いは、歌舞伎界に大きな波紋を広げました。この事件をきっかけに、菊五郎は一時京都へ帰ってしまうほどでした。その影響は長く尾を引き、後に幸四郎が上方へ客演した際には、冷遇を受けることになったと伝えられています。

晩年になると、幸四郎の性格は穏やかになったと言われています。1801年（享和元年）、息子の三代目市川高麗蔵に五代目幸四郎の名跡を譲り、自身は男女川京十郎を名乗りました。それから間もなくして、彼はこの世を去りました。その墓所は、東京押上の大雲寺にあります。

四代目松本幸四郎は、写実的な芸風を確立した人物として知られています。その芸風は、後の五代目幸四郎によってさらに完成されたと言われています。彼の功績は、現代の歌舞伎にも大きな影響を与え続けています。

近年では、2017年から放送されている三井不動産のテレビCM「福徳の森で」編で、7代目染五郎が江戸時代の日本橋にタイムスリップし、四代目松本幸四郎演じる初代染五郎と出会うという物語が展開されました。このCMは、彼の名を再び世に知らしめる一助となったと言えるでしょう。

四代目松本幸四郎の生涯は、歌舞伎役者としての成功と苦悩、そして時代を彩った数々のエピソードに満ちたドラマチックなものでした。彼の功績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。彼の生き様は、後世の役者たちにとって、貴重な教訓とインスピレーションを与え続けることでしょう。

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