松本斗機蔵

松本斗機蔵（まつもと ときぞう）は、寛政5年（1795年）に生まれ、天保12年9月12日（1841年10月26日）に没した江戸時代後期の儒学者です。彼は八王子千人同心組頭という役職にあり、三十表一人扶持を受けていました。

斗機蔵は、同じく千人同心組頭であり「桑都日記」を著した塩野適斎に漢学を学び、湯島の昌平黌でも学問を深めました。彼は下総千葉氏の出身であるとされ、後に千人同心組頭である松本家の養子となりました。

斗機蔵は、幅広い人脈を持っており、渡辺崋山、高野長英、伊豆韮山代官の江川英龍など、当時の知識人たちと親交がありました。また、探検家の最上徳内や地理学者の高橋景保とも交流し、水戸藩の藤田東湖とも接点を持つなど、開明派の一人として知られていました。

天保8年（1837年）末、斗機蔵は「献斤微衷（けんきんびちゅう）」を著し、水戸藩主の徳川斉昭に献上しました。天保9年（1838年）10月には、尚歯会の例会において、渡辺崋山や高野長英らとともにモリソン号再来に関する答申案を知ります。その際、幕府の意向を打ち払いにあると誤解し、幕府に「上書」を提出しました。

これらの著述の中で、斗機蔵は鎖国政策を見直し、貿易を振興すること、海防の充実を図るべきであること、異国船打払令が無謀であること、そして穏便な交渉が必要であることを建言しました。彼の進歩的な考えは、当時の社会に大きな影響を与えたと考えられます。

天保12年（1841年）、斗機蔵は幕府にその才能を評価され、浦賀奉行に任命されました。しかし、彼は赴任することなく、同年病没しました。彼の墓は、八王子市千人町の宗格院にあります。

松本斗機蔵は、江戸時代後期における開明的な思想家の一人として、その名を知られています。彼の功績は、鎖国政策の見直しや貿易の振興、海防の充実といった、近代日本の礎を築く上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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