松本白鸚 (初代)

初代松本白鸚の生涯

初代松本白鸚（しょだい まつもと はくおう）は、1910年7月7日に東京で生まれました。本名は藤間順次郎（ふじま じゅんじろう）で、後に歌舞伎役者として名を馳せました。彼は父、七代目松本幸四郎の次男として生まれ、歌舞伎の道へ進むことになります。正式な初舞台は1926年のことで、二代目松本純蔵の名で演じました。

歌舞伎役者としてのキャリア

後に初代中村吉右衛門の門下に入門し、1931年には明治座での舞台で五代目市川染五郎を襲名しました。その後、戦後には日本の歌舞伎界において重要な存在として認識されるようになりました。1949年には八代目松本幸四郎の名跡を受け継ぎ、彼の名はその後の歌舞伎界においても長く語り継がれることになります。

歌舞伎の枠を超えた独自の芸風により、白鸚は劇団への移籍やシェイクスピア劇への挑戦を果たしています。特に1961年に松竹を離れ、劇作家菊田一夫に招かれて東宝に移籍したことが、歌舞伎界に新たな風を吹き込みました。

芸風と役どころ

松本白鸚の芸風は、男らしさと風格を兼ね備え、父から受け継いだ豪快さと岳父から学んだ伝統を見事に融合させていました。数々の古典作品において彼が演じたキャラクターは、いずれも印象的かつ強烈でした。代表作には、たとえば『勧進帳』の武蔵坊弁慶や『仮名手本忠臣蔵』の大星由良助があります。

新歌舞伎作品にも挑戦し、『井伊大老』や『元禄忠臣蔵』においても重要な役を担いました。また映画やテレビドラマにも出演し、特にテレビ時代劇『鬼平犯科帳』における演技は多くの視聴者に愛されました。

賞と栄誉

白鸚はその素晴らしい才能により数々の賞を受けており、1972年には紫綬褒章を受賞、1974年には日本芸術院賞を受賞しました。1975年には重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定され、1978年には文化功労者として表彰されるなど、彼の功績は認められてきました。

晩年と引退

1981年には松本幸四郎の名跡を長男に譲り、この頃彼の体調は悪化していました。晩年にはベーチェット病に苦しみながらも、襲名披露の舞台を務め、名跡を引き継ぐ儀式を果たしました。この最期の舞台は、彼にとって大変意義深いものでしたが、同時に健康状態が悪化していたため、身体的な苦痛を伴うものでもありました。

その後1982年1月11日、心不全により亡くなりました。享年71歳。彼の遺骨は東京の池上本門寺に埋葬され、今も多くの人々に敬愛されています。

家族

白鸚の家系は歌舞伎界でも屈指の実力を持ち、それを引き継いでいく存在が息子たちであることも特筆すべき点です。長男は二代目松本白鸚、次男は二代目中村吉右衛門として歌舞伎界に名を残しています。その後もその名は途絶えることなく続いており、孫たちも同様に歌舞伎界で活躍の場を広げています。

松本白鸚の記憶は、彼が築き上げた名跡や演技を通じて、今後も永遠に受け継がれていくでしょう。

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