松本謙一

松本謙一：鉄道模型と歴史教科書、二つの顔を持つ編集者

松本謙一（1949年 - ）は、日本の雑誌編集者であり、鉄道ファンとしても知られています。彼は、月刊鉄道模型雑誌「とれいん」の元編集主幹であり、同誌の発行元である株式会社エリエイの元社長でもあります。また、保守系の歴史修正主義団体「新しい歴史教科書をつくる会」の東京支部長や、自由社の取締役教科書編集室長を務めた経歴も持ちます。

生い立ちと「とれいん」創刊

東京都中央区出身の松本は、立教中学校、立教高校を経て立教大学に進学しますが、1年で中退します。その後、「鉄道ジャーナル」の契約カメラマンを経て、家業である呉服店「ゑり栄」（エリエイの前身）に入社しました。

1974年12月、松本は「とれいん」を創刊します。当時、鉄道模型専門誌は事実上一誌のみという状況でしたが、「とれいん」は、それまで注目されていなかった1/80、13mmゲージや1/87、12mmゲージといった比較的小さなスケールの模型に関する記事を積極的に掲載し、鉄道模型趣味の裾野を広げることに貢献しました。

「とれいん」は、鉄道模型の世界に新たな風を吹き込み、多くのファンに支持される雑誌へと成長しました。松本は、編集主幹として長年にわたり同誌を支え、鉄道模型文化の発展に尽力しました。

「つくる会」での活動と追放

松本は、「新しい歴史教科書をつくる会」にも積極的に関与しました。2000年から2006年まで東京支部長を務め、同会が推進する歴史教科書の編纂に携わりました。しかし、彼の活動は時に物議を醸し、2006年に表面化した同会の内紛では、藤岡信勝を支持する急先鋒として活動しました。

その後、扶桑社から絶縁された藤岡信勝派が新たな発行元として選んだ自由社で、松本は取締役教科書編集室長に就任し、教科書編集を一手に引き受けます。しかし、業務遂行を巡って藤岡やその側近である石井竜生から批判を受け、検定合格直後の2009年4月15日に教科書編集室長を解任・追放されるという事態に陥りました。

この解任劇以降、松本は藤岡を批判する側に転じ、関係者に送ったメールの中で、藤岡を「スターリン、毛沢東、金日成と変わるところはない個人崇拝誘導、独占支配体制の確立」、石井を「階級差別主義者」と激しく非難しました。松本によれば、この間の藤岡・石井の二人の悪辣な振る舞いを目の当たりにしたせいで、松本の夫人は体調を崩し、通院を余儀なくされたといいます。

著書

松本は、鉄道模型や趣味に関する著書も多数発表しています。

『僕の小さな水族館のマリン・エンゼルフィッシュたち』（エリエイ、1993年）
『しんかんせんスーパーとっきゅう のりものスーパー百科1』（ひかりのくに、1994年）
* 『とっきゅうブルートレイン のりものスーパー百科2』（ひかりのくに、1994年）

など、子供向けの乗り物図鑑から、趣味に関する専門書まで、幅広いジャンルの書籍を執筆しています。

松本謙一は、鉄道模型雑誌の編集者として、また歴史教科書問題に関わる活動家として、多岐にわたる分野でその名を残しています。彼の活動は、時に賛否両論を呼びましたが、その情熱と行動力は、多くの人々に影響を与えたと言えるでしょう。

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