松浜軒

松浜軒：肥後熊本藩の余韻漂う名勝庭園

熊本県八代市北の丸町に位置する松浜軒（しょうひんけん）は、かつて肥後熊本藩細川氏の筆頭家老を務めた松井家の邸宅と庭園です。別名「浜の茶屋」とも呼ばれ、国の名勝に指定されています。その歴史と美しさ、そして独特の雰囲気は、多くの観光客を魅了しています。

創建と歴史

松浜軒は、1688年（元禄元年）、松井家三代当主・松井直之が、生母崇芳院尼のために建てた茶屋が起源です。八代城から北西へ約300m、かつては八代海に面した場所に位置していました。そのため、松林を吹き抜ける風の音から「浜の茶屋」という別名が付いたと伝えられています。しかし、後の干拓事業により海岸線は後退し、松林も姿を消してしまいました。

当時の様子は、熊本藩の医者であり儒学者、郷校伝習堂の師範でもあった宮崎雲台が著した『松浜軒記』に記されています。「阿蘇の白雪、金峰の朝嵐を望む」という記述から、松浜軒が阿蘇山、金峰山、雲仙岳を借景とした雄大な庭園であったことが分かります。

庭園の四季

約9,000平方メートルの庭園は、四季を通じて様々な花々が咲き誇ります。ツツジ、ヤマフジ、カキツバタ、コウホネ、オニバスなど、多様な植物が彩りを添えます。中でも、6月頃に池を埋め尽くすように咲き誇る肥後花菖蒲は圧巻で、県内外から多くの観光客が訪れ、鑑賞茶会も開催されるほどの人気です。

伝説と信仰

園内には、「赤女が池」「赤女が森」など、怪異伝説にちなんだ場所も存在します。また、伏見稲荷大明神や児宮（ちごのみや）と呼ばれる祠も祀られています。多層塔、石灯籠、石橋（太鼓橋）といった造園要素も配置され、歴史と神秘的な雰囲気を醸し出しています。

建物と宝物館

松浜軒の建物は二階建てで、母屋は茅葺、下屋は杮葺きの屋根となっています。門の横には、馬屋を改築した宝物館があり、松井家ゆかりの文化財や美術品が展示されています。1949年（昭和24年）には、昭和天皇と香淳皇后が熊本巡幸の際に宿泊されたという歴史も持ちます。

アクセスと情報

松浜軒は、JR九州鹿児島本線八代駅または新八代駅からバスでアクセス可能です。自家用車の場合は九州道八代ICから約6kmです。駐車場も完備されています。開園時間は9:00～17:00（入園は16:30まで）、休館日は月曜日（祝日の場合は翌日が休館。6月の月曜日は開館）、お盆、年末年始です。入場料金は一般500円、小・中学生250円（30名以上の団体は割引あり）となっています。

指定と文化財

1950年（昭和25年）9月12日には、茶屋建物が八代市の有形文化財に指定されました。そして、2002年（平成14年）12月19日には、庭園が国の名勝として指定されています。

松浜軒は、歴史、自然、そして文化が融合した貴重な場所です。八代を訪れた際には、ぜひ訪れて、その魅力を体感してみてください。

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