松鶴家千とせ

松鶴家千とせ：アフロヘアーと独特のフレーズで一世を風靡したマルチタレント

松鶴家千とせ（本名：小谷津英雄）は、漫談家、歌手、作詞家として幅広く活躍した人物です。1938年、満洲国で生まれ、複雑な生い立ちを経て日本の芸能界で成功を収めました。1970年代には、アフロヘアーと「俺が昔、○○だった頃…」という独特のフレーズ、そしてピースサインで締めくくるパフォーマンスで人気を博し、数々のテレビやラジオ番組に出演しました。

波乱万丈の生涯

千とせの生涯は、決して平坦なものではありませんでした。満洲国で生まれ、終戦時にはソ連軍捕虜となった父親と生き別れ、母とともに6人で日本へ帰国しました。その後、福島県で育ち、水道設計技師であった父の影響を受けつつ、ジャズシンガーを志して上京。松鶴家千代若・千代菊に入門し、歌謡学校に通いながら理容師免許も取得するなど、多様な才能を開花させました。

漫談家としては、様々なコンビを組み、1967年に三代目松鶴家千とせを襲名。相方の宮田羊かんとのコンビでNHK漫才コンクールにも出場するなど、着実にキャリアを積みました。しかし、千とせの真のブレイクは、1974年頃から始まります。トレードマークとなったアフロヘアーとあごひげ、そして「わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ」というフレーズを織り交ぜた独特の漫談スタイルが、人々の心を掴んだのです。

「夕焼け小焼け」替え歌と歌手活動

特に有名になったのは、『夕焼け小焼け』の替え歌を元にした漫談です。「シャバダバダディ〜！、イェーイ！。俺が昔、夕焼けだった頃、弟は小焼けで、父さんは胸やけで、母さんは霜やけだった。」というギャグは、彼の代表作の一つとなりました。この人気を背景に、1975年にはシングル『わかんねェだろうナ（夕やけこやけ）』をリリースし、大ヒットを記録しました。

漫談家としての成功にとどまらず、千とせは歌手としても精力的に活動しました。ジャズ歌手志望だった経験を生かし、ジャジーなスキャットを取り入れつつ、民謡や童謡などを融合させた独自の音楽性を確立しました。自身のホームページを自作するなど、ITにも精通していたという一面も持ち合わせていました。

後年の活動と死去

1981年には「全国さつまいもの会」を結成し、ボランティア活動にも積極的に参加。足立区社会福祉協議会への寄付や、老人ホームなどでの公演などを通して地域社会に貢献しました。晩年も、東京都近郊の演芸会場で精力的に活動を続け、2012年には芸能生活60周年を記念したCDをリリースするなど、アーティストとしての活動を継続しました。

2022年1月、風邪をきっかけに急性心筋梗塞を発症し、緊急入院。その後、容態が急変し、2月17日に84歳で死去しました。彼の死は、多くのファンに衝撃を与えました。

多くの楽曲と記憶

千とせは、漫談活動と並行して数多くの楽曲を発表しました。その中には、自ら作詞作曲を手掛けたものも多く含まれ、多才ぶりを改めて感じさせます。彼の作品は、ユーモラスな漫談スタイルと同様に、人々の記憶に深く刻まれています。アフロヘアーと独特のフレーズ、そして持ち前の明るさで多くの人を魅了した松鶴家千とせの功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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