板倉文忠

板倉 文忠（いたくら ふみただ）

板倉文忠は、1940年8月6日に生まれた日本の工学者で、情報通信工学の分野で卓越した業績を残しています。彼は名古屋大学の名誉教授であり、電子情報通信学会の副会長を務めるなど、学術界での影響力は非常に大きい人物です。また、紫綬褒章を受けるなど、その研究成果や社会貢献が高く評価されています。

略歴

板倉は愛知県豊川市に生まれ、1959年に愛知県立時習館高等学校を卒業しました。その後、1963年には名古屋大学工学部の電子工学科を卒業し、1965年には同大学の大学院工学研究科修士課程を修了しました。1968年には博士課程を満了し、同年に日本電信電話公社（現・日本電信電話）の電気通信研究所に入所しました。

彼の学位取得の過程で特筆すべきは、1972年に発表した論文「統計的手法による音声分析合成系」で、これにより名古屋大学から工学博士の学位を授与されました。さらに、1973年から1975年にはアメリカのベル研究所で客員研究員として活躍しました。1998年から2000年までは電子情報通信学会副会長を務め、その後2004年には名古屋大学工学部の教授に就任しましたが、同年に定年退官しました。

退官後は名城大学理工学部の教授に就任し、教育と研究に従事しつつ、2006年には大学発のベンチャー企業ASPROTECを設立し、代表取締役に就任しました。2011年3月には名城大学の教授職を退き、故郷の豊川市に戻って家業を承け、さらに太陽光発電事業を始めました。

業績

板倉文忠の専門は音声情報処理とデジタル信号処理であり、1967年に自己回帰過程の漸近的最尤スペクトル推定による音声分析合成方式を発明しました。この研究は音声処理技術に大きな影響を与えました。また、1969年には偏自己相関係数（PARCOR）方式を発明し、1973年には最小予測残差による音声認識の提案を行いました。さらに、1975年には線スペクトル対（LSP）による音声分析合成方式を発明し、その後、これらの技術は携帯電話を含む様々な分野で応用されました。

受賞歴

板倉はその業績に対して数々の賞を受賞しており、1986年にはモーリス・N・リーブマン記念賞、2004年には朝日賞、2005年にはIEEEジャック・S・キルビー信号処理メダルを受賞しました。2009年にはC&C賞を受賞し、加えて電子情報通信学会や日本音響学会からも多数の論文賞や業績賞を受け取っています。板倉はまた、電子情報通信学会のフェロー、名誉会員、さらにIEEEのフェローにも選ばれています。これらの業績と受賞により、彼は情報通信工学の分野において非常に重要な存在となっています。

おわりに

板倉文忠は、情報通信工学界における先駆者として、その研究や教育を通じて多くの貢献を果たしてきました。今後も彼の業績は、次世代の技術者や研究者に引き継がれていくことでしょう。

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