板橋菊松

板橋菊松（1888-1983）は、明治から昭和期にかけて活躍した日本のジャーナリスト、大学教授であり、その生涯は激動の時代を反映した波乱に満ちたものでした。

大阪府に生まれた板橋は、関西大学に入学後、早稲田大学政経学科に転じ、卒業後は宮武外骨が主宰する大阪滑稽新聞に入社します。同紙で記者として活躍し、宮武外骨が編集から離れた後は主筆を務めるなど、ジャーナリストとしての才能を開花させました。

1920年には朝鮮に渡り、京城高等商業学校で講師を務めます。その後、日本に帰国し、立教大学講師に就任。翌年には教授に昇進するなど、着実にキャリアを積んでいきます。1928年には司法省在外研究員としてアメリカとイギリスに留学し、国際的な視野を広げました。

帰国後、法政大学教授を経て、1931年から関西大学講師に就任。1930年代には、政治的立場を明確にし、美濃部達吉の天皇機関説を批判するなど、時代の政治状況に積極的に関与しました。

関西大学では、1953年に商学部教授に昇進、翌年には商学部長に就任。さらに、1956年には東京連絡本部長に就任するなど、大学運営にも大きく貢献しました。1958年に定年退職したものの、客員教授、顧問として大学に残りました。

1963年には大阪学院大学教授に就任し、1975年には同大学総長に就任。その間、大学設置基準協会理事、大学設置審議会委員、私立大学連盟常務理事など多くの要職を歴任し、私立大学の発展に尽力しました。

学究・教育者としての活動に加え、板橋は異色の経験も積んでいます。プロレス界にも関わりを持ち、アントニオ猪木が1966年に旗揚げした東京プロレスではコミッショナーを務めました。

板橋菊松の著作には『長期戦と経済建設』（1939年）、『社債法と社債信託論』（1965年）などがあります。これらの著作は、彼の専門知識と社会への関心の深さを示しています。

94歳で逝去した板橋菊松。ジャーナリスト、大学教授としてだけでなく、教育行政にも携わり、プロレス界にも関わった彼の多様な経験と功績は、日本の近代史の一断面を照らし出すとともに、今後の教育界、メディア界に示唆を与えるものと言えるでしょう。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた知性と行動力、そして教育への揺るぎない情熱の物語です。 彼の業績は、単なる経歴以上の、日本の高等教育の発展に寄与した重要な足跡として記憶されるべきでしょう。また、彼の政治的な発言や行動は、当時の社会情勢を理解する上で貴重な資料となります。 多彩な才能と経験を持つ、まさに時代の生き証人であったと言えるでしょう。

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