板谷茂

板谷茂

板谷茂（いたや しげる、1909年7月10日 - 1944年7月24日）は、大日本帝国海軍の軍人。海軍兵学校を首席で卒業し、航空参謀として太平洋戦争初期の主要な作戦に参加しました。最終階級は海軍中佐。統合幕僚会議議長を務めた板谷隆一は実弟にあたります。

生涯

1909年、佐賀県で農家の長男として誕生。幼少期から優秀で、海軍兵学校には次席で入学。陸軍士官学校にも首席合格を果たしています。1929年に海軍兵学校を首席卒業後、海軍将校としてキャリアをスタートさせました。

1930年代には、龍驤や飛龍といった航空母艦の分隊長を歴任。1941年には、第一航空艦隊所属の赤城戦闘機隊飛行隊長に就任し、太平洋戦争開戦を迎えます。

真珠湾攻撃作戦では、第一次攻撃隊制空隊指揮官として参加。作戦会議では「寝込みを襲わねばならないのか」と苦言を呈するなど、慎重な性格であったとされています。また、作戦の結末に対する懸念も示しており、冷静な判断力と現状分析能力を有していたことが伺えます。

1942年のミッドウェー海戦では、南雲機動部隊の一員として参加。連合艦隊司令長官山本五十六が戦艦大和で後方から追随していることに対し、「戦争見物でもするつもりか」と批判しました。この発言からは、現場を重視する板谷の姿勢が窺えます。

ミッドウェー海戦での赤城は、アメリカ軍の急降下爆撃により大破。板谷を含む多くの搭乗員が退艦した後に沈没しました。その後、板谷は第二三航空戦隊、第五一航空戦隊の航空参謀を歴任。

1944年7月24日、九六式陸上攻撃機で北千島の幌筵へ移動中、千島列島方面で陸軍機からの誤射により戦死。その生涯を終えました。

人物

板谷は、海軍兵学校を首席で卒業したエリートでありながら、常に現場を重視する姿勢を持っていました。また、作戦遂行にあたっては、現状を冷静に分析し、批判的な視点を持つこともありました。彼の言動は、当時の軍部の硬直的な作戦遂行に対し、一石を投じるものとして捉えることもできます。

参考文献

神立尚紀 『零戦最後の証言 II 』、光人社、2000年、ISBN 978-4769809654。光人社NF文庫、2011年、ISBN 978-4769826798
神立尚紀 『祖父たちの零戦』、講談社、2010年、ISBN 978-4062163026
生出寿 『真珠湾攻撃隊総指揮官 淵田美津雄中佐の生涯』（徳間書店、1992年） ISBN 4-19-224925-1
秦郁彦 編著『日本陸海軍総合事典』（第2）東京大学出版会、2005年。
* 星亮一 『淵田美津雄 真珠湾攻撃を成功させた名指揮官』（PHP文庫、2000年） ISBN 4-5695-7391-6

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