板谷進

板谷進九段：東海の若大将の生涯

板谷進（いたやすすむ）は、1940年12月10日、愛知県名古屋市に生まれた将棋棋士である。名門・板谷四郎九段を父に持ち、その血を受け継ぎ、自身も数々のタイトル戦で活躍した、昭和を代表する棋士の一人と言えるだろう。

1958年、父である板谷四郎九段に入門し、奨励会入りを果たす。弟弟子には後にタイトルを獲得する石田和雄九段らがいた。1962年に四段に昇段後、着実に実力をつけていき、1974年には八段に昇段。その棋風は豪快で、自ら「将棋は体力」と称していたという逸話からも、彼の積極的な姿勢がうかがえる。

タイトル戦においては、惜しくもタイトル獲得とは無縁に終わったものの、幾度となく挑戦者決定リーグに進出するなど、その強さを示した。特に1981年度の棋王戦では、挑戦者決定トーナメントを無敗で勝ち抜き、中原誠、大山康晴、谷川浩司といった当時のトップ棋士を次々と破る快進撃を見せた。また、1983年度の棋王戦では敗者復活から決勝まで勝ち進んだものの、いずれも森安秀光九段に阻まれ、タイトル挑戦の夢は叶わなかった。

1988年2月8日、第52期棋聖戦二次予選決勝で有吉道夫九段に勝利し、8年14期ぶりとなる挑戦者決定トーナメント進出を決めた。しかし、この対局が、彼の生涯最後の公式戦となった。2月24日、47歳という若さでくも膜下出血のため急逝。その功績を称え、九段位を追贈された。

板谷進九段は、父・四郎九段と共に親子二代の九段という偉業を達成した（木村義雄・木村義徳親子のみが他に該当する）。「東海の若大将」と呼ばれ、東海地方の将棋界を牽引した存在であった。棋士としての活動以外では、日本将棋連盟理事を長く務めるなど、将棋界の発展にも大きく貢献している。私生活ではチェスを趣味とし、愛酒家、棋書や盤駒の収集家としても知られていた。

彼の死から35年以上が経過した2023年、孫弟子の藤井聡太棋王が渡辺明棋王を破り、棋王位を獲得した。これは、板谷進九段の悲願であった棋王のタイトルを、彼の弟子筋が獲得したことを意味し、彼の将棋界への貢献が、再び大きな注目を集めることとなった。

順位戦ではA級に6期在籍し、1977年度には日本将棋連盟杯争奪戦で優勝。1973年度には第1回将棋大賞殊勲賞を受賞するなど、数々の功績を残した。主な著書に『熱血将棋順位戦』がある。

板谷進九段の生涯は、華々しい活躍と、惜しまれる早すぎる死という、対照的な側面を持つ。しかし、彼の豪快な棋風、そして将棋界への貢献は、多くの人々の記憶に深く刻み込まれている。彼の弟子や孫弟子たちが活躍する現代将棋界において、その功績は、今後も語り継がれていくであろう。彼の死後も、彼の弟子たちは将棋界で活躍を続け、彼の意志を受け継いでいる。

昇段履歴は以下の通りである。

1962年10月1日：四段
1964年4月1日：五段
1967年4月1日：六段
1972年4月1日：七段
1974年4月1日：八段
1988年2月24日：引退（現役のまま死去）
* 1988年2月24日：九段（追贈）

通算成績は471勝412敗である。

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