板谷四郎

板谷四郎九段：波瀾万丈の棋士人生と名古屋将棋界への貢献

板谷四郎（1913年～1995年）は、三重県伊勢市出身の将棋棋士である。木村義雄十四世名人門下として、将棋界で活躍しただけでなく、名古屋将棋界の発展に大きく貢献した人物として知られる。棋士番号29、A級に3期在籍した実力者であり、九段の称号を贈られた。その次男は、同じく将棋棋士として活躍した板谷進九段である。

軍隊生活と将棋への道

20歳の若さで召集され、中国大陸での激戦を経験した板谷。8年以上にわたる軍隊生活を経て、1945年に終戦を迎えた。戦後、26歳で奨励会に入会。木村義雄名人（当時）を師事し、1941年に四段となりプロ棋士としての道を歩み始める。

プロ棋士としての活躍と指導者としての貢献

1950年には順位戦でA級に昇級し、3期にわたってA級棋士として活躍した。1950年度の第1期九段戦では準優勝、1954年には全八段戦で優勝するなど、多くのタイトルを獲得した。1959年に引退するまで、第一線で活躍した。

引退後は、名古屋市錦に「板谷将棋教室」を開設。指導者として後進の育成に力を注ぎ、多くの弟子を育て上げた。教室は、日本将棋連盟東海本部の拠点も兼ねるようになり、中部地方の将棋普及に大きく貢献した。2008年に閉館するまで、多くの棋士を輩出した。その後、栄に移転し「栄将棋教室」として現在も営業を続けている。

人柄と逸話

板谷は厳格な指導者であった一方で、弟子思いの温かい人柄でも知られていた。内弟子として板谷の下で修行した中田章道氏によると、フライドチキンや寿司を差し入れしてくれるなど、弟子を気遣う一面もあったという。

また、1986年には、当時不振に陥っていた芹沢博文九段を厳しく叱咤激励した逸話も残っている。その言葉は芹沢九段に深く刺さり、その後の人生に影響を与えたとされている。

「中京棋界にタイトルを」という長年の願いは、曾孫弟子の藤井聡太七冠の棋聖獲得によって2020年に叶えられた。

受賞歴と晩年

1986年には勲五等双光旭日章を受章。1988年には、次男である板谷進八段を亡くす悲しみを経験。そして、1995年、肺気腫のため82歳で生涯を閉じた。

まとめ

板谷四郎九段は、戦乱を経験し、将棋棋士として、指導者として、多様な人生を送った人物である。その人生は、困難を乗り越え、常に前を向いて歩み続けることの大切さを教えてくれる。将棋界への貢献だけでなく、人として多くのものを残した、偉大な棋士であったと言えるだろう。彼の功績は、現在も名古屋将棋界に受け継がれている。彼の弟子や、その教室で育った棋士たちが、現代の将棋界を支えている。

年表

1913年：三重県伊勢市に生まれる
1940年：奨励会に入会（二段）
1941年：四段（プロ入り）
1950年：A級昇級
1954年：全八段戦優勝
1959年：引退、板谷将棋教室を開設
1979年：九段（贈九段）
1986年：勲五等双光旭日章受章
1995年：死去

昇段履歴

1940年：二段
1941年：四段
1943年：五段
1948年：七段
1950年：八段
* 1979年：九段（贈九段）

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