林以文

林以文（りん いぶん）：激動の時代を駆け抜けた台湾出身の実業家・政治家

林以文（1913年12月14日 - 1976年3月26日）は、日本と台湾を股にかけて活躍した人物です。実業家としては惠通企業（現在のヒューマックス）を創業し、社長として手腕を振るいました。また、東京華僑総会会長、日本華僑連合総会（現在の日本中華連合総会）会長を歴任するなど、華僑社会においても重要な役割を果たしました。政治家としては、台湾の僑選立法委員（在外立法委員）を務めました。

生い立ちと初期の活動

林以文は、日本統治時代の台湾・台中州大屯郡霧峰庄柳樹湳（現在の台湾台中市霧峰区柳樹湳）に生まれました。父の林錦順は、早くから事業を興し、地域社会のリーダーとしても活躍した人物です。以文は兄弟とともに成長し、後に日本での事業を支えることになります。台中州立台中商業学校（現在の国立台中科技大学）を卒業後、東京に移住しました。

実業家としての成功

第二次世界大戦後、林以文は新宿ムーランルージュの再建に尽力しました。また、歌舞伎町の開発を手がけ、映画館「新宿地球座」を新築・開業し、同地の商業進出の先駆けとなりました。1948年には惠通企業株式会社（現在の株式会社ヒューマックス）を設立し、地球座などの経営に取り組みました。岸信介、福田赳夫ら日本の政界人とも交流を深めました。

1950年代には、新宿劇場の新築・開業や、恵通不動産株式会社、恵通商事株式会社、株式会社地球会館の設立など、事業を多角的に展開しました。また、宮城県仙台市郊外での宅地開発事業にも進出し、「恵通苑」「越路苑」などの大規模な住宅地を造成・分譲しました。渋谷地球会館（現ヒューマックスパビリオン渋谷公園通り）の新築や、映画製作会社ジョイパックフィルム（のちのヒューマックスピクチャーズ）の設立など、その活動は多岐にわたりました。

華僑社会への貢献と政治活動

林以文は、東京華僑総会会長、日本華僑連合総会会長として、華僑社会の発展に尽力しました。また、故郷である台湾への貢献も忘れず、錦順紀念館の設立や学校への寄付、図書館の設立など、教育・文化の振興に貢献しました。1973年には、台湾の僑選立法委員に選出され、政治家としても活動しました。

死と遺産

1976年3月26日、林以文は脳出血のため都内の自宅で亡くなりました。葬儀は福田赳夫が葬儀委員長を務め、多くの人々がその死を悼みました。没後、惠通企業の社長には長男の林瑞祥が就任し、企業は「ヒューマックス」と改称されました。林以文の功績は、台湾政府から「忠謨碩望」の称号を授与されるなど、高く評価されています。

林以文は、激動の時代を生き抜き、実業家、華僑社会のリーダー、政治家として多岐にわたり活躍した人物です。その足跡は、現在もヒューマックスグループの事業や、台湾の霧峰区以文図書館などにその名を残しています。

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