林士弘

林士弘（りん しこう）

林士弘は、隋末から唐初にかけて活躍した群雄の一人であり、南越王、または楚帝を自称しました。

生涯

饒州鄱陽県（現在の江西省鄱陽県）の出身である林士弘は、大業11年（615年）に同郷の操師乞（そうしきつ）と共に隋に対して挙兵しました。翌大業12年（616年）に、操師乞は元興王を自称し、始興と建元して豫章郡（現在の江西省南昌市付近）を拠点としました。この時、林士弘は大将軍に任じられました。隋は劉子翊（りゅうしよく）を派遣して操師乞を討伐し、操師乞は戦死しました。

林士弘は操師乞の残党を糾合し、劉子翊と鄱陽湖で再戦して勝利し、劉子翊を討ち取りました。彼の勢力は10万を超える規模に膨れ上がり、虔州（現在の江西省贛州市）を拠点として、南越王を自称するに至りました。さらに、林士弘は楚の皇帝を僭称し、独自の元号として太平を立てました。鄭大節（ていだいせつ）が九江郡を率いて林士弘に呼応すると、林士弘は鄭大節の配下であった王戎（おうじゅう）を司空に任じました。臨川、廬陵、南康、宜春の人々が隋の太守や県令を殺害して林士弘に合流し、彼の支配地域は北は九江から南は番禺にまで及ぶ広大なものとなりました。

太平2年（618年）に、蕭銑（しょうせん）の水軍に豫章で敗北すると、林士弘は洪州、虔州、循州、潮州の地を保持するのみとなりました。太平5年（621年）に蕭銑が唐に敗れると、亡命してきた兵士によって林士弘の勢力は一時的に盛り返しました。しかし、唐の趙郡王李孝恭（りこうこう）の招慰工作により、循州と潮州は唐に帰順しました。

太平6年（622年）、林士弘の弟である鄱陽王林薬師（りんやくし）が兵2万を率いて循州を包囲しましたが、唐の総管楊世略（ようせいりゃく）に撃破され、林薬師は戦死しました。窮地に陥った林士弘は、やむなく唐に降伏を願い出ました。王戎もまた唐に降伏し、洪州総管となりました。林士弘は安成の山洞に逃れて亡命者を誘い、再び挙兵を企てましたが、袁州の人々が呼応したものの、張善安（ちょうぜんあん）が林士弘を討伐しようとしました。しかし、その前に林士弘が病死したため、彼の勢力は瓦解しました。

伝記資料

『旧唐書』巻五十六 列伝第六「林士弘伝」
『新唐書』巻八十七 列伝第十二「林士弘伝」

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