林家小染 (4代目)

四代目 林家小染：破天荒な天才落語家の生涯

1947年、大阪市阿倍野区に生まれた山田昇は、8歳の時に父を亡くすという悲劇に見舞われます。中学時代、落語家への道を志し、3代目林家染丸に入門を志願するも、厳しい現実を突きつけられ断念。しかし、落語への情熱は消えず、高校時代には笑福亭鶴光と落語研究会を結成し、互いに切磋琢磨する日々を送ります。高校1年生の時、自作の落語を持って再度染丸に入門を志願。その熱意に打たれた染丸は彼を弟子に迎え入れました。

1964年1月、林家小染として落語家人生をスタートさせます。翌年、京都花月で初高座を踏むと、師匠の死を乗り越え、持ち前の明るさと才能で人気を集めていきます。1972年には、人気番組『ヤングおー!おー!』で結成された若手落語家ユニット「ザ・パンダ」の一員として、お茶の間の人気者となりました。

テレビ出演をこなしながら、落語家としての研鑽を怠らず、大ネタにも挑戦。1979年には初の独演会を開催し、その才能は6代目笑福亭松鶴をも感涙させるほどでした。4代目染丸を継ぐと目され、将来を嘱望されていた矢先、1984年1月、36歳の若さで急逝します。酒を飲んで車を避けきれず事故に遭い亡くなるという、あまりにも突然の悲報は、落語界に大きな衝撃を与えました。

小染は、酒豪として知られていましたが、その酒癖の悪さでも有名でした。先輩芸人を侮辱したり、公共の場で問題を起こしたりと、数々の逸話を残しています。しかし、酒が抜けた状態では礼節をわきまえた芸人だったと証言する人もいます。また、彼は熱心な相撲好きでもあり、タニマチとして相撲に関わっていたという一面も持ち合わせていました。

彼の芸風は、若くして老成したような丁寧でゆっくりとした口調が特徴でした。師匠からはそのしゃべり方を指摘されたものの、独自のスタイルを貫き通しました。弟弟子と共に軽口を演じるなど、幅広い芸を披露していました。代表的な演目には、『らくだ』『堀川』『景清』などがあります。

小染の死後、彼の弟子たちはそれぞれ異なる門下で落語家として活動を続けました。2009年にはDVD+CDボックスが発売され、2010年には追善落語会が開催されるなど、現在もなお、彼の芸と人となりは多くの人の記憶に刻まれています。彼の早すぎる死は、多くのファンに深い悲しみと、今後の活躍への期待を同時に残しました。

小染の芸と人となり：多面性を持つ落語家像

林家小染は、落語家としてだけでなく、テレビタレントとしても活躍しました。その多才ぶりは、彼が様々な番組に出演していたことからもわかります。しかし、彼の真の魅力は、その破天荒な生き様と、確かな落語の技術にありました。

酒癖の悪さや奇行の数々は、彼の複雑な内面を反映していると言えるでしょう。しかし、同時に、彼の落語に対する情熱や、仲間を想う気持ちも、数々のエピソードから伝わってきます。晩年、染丸襲名を意識していたという事実からも、彼の落語家としての揺るぎない意志がわかります。

小染が残した数々の演目は、彼の芸風を今に伝えています。ゆっくりとした丁寧な語り口調は、彼の個性であり、多くの聴衆を魅了しました。また、軽口を演じるなど、芸の幅広さも彼の魅力の一つです。

小染の早すぎる死は、多くのファンにとって大きな損失となりました。しかし、彼の芸は、DVDや追善落語会を通じて、現在もなお、多くの人に伝えられています。彼の生き様と芸は、後世の落語家たちに、大きな影響を与え続けることでしょう。

参考文献

諸芸懇話会・大阪芸能懇話会（編）『古今東西落語家事典』平凡社、1989年
5代目桂文枝『あんけら荘夜話（新装版）』（小佐田定雄）青蛙房、2011年11月
笑福亭鶴光『つるこうでおま!』白夜書房、2008年7月
戸田学『上方落語の戦後史』岩波書店、2014年7月
前田五郎『芸能界み～んなホントのことでっせ!』日本文芸社、1993年
やまだりよこ 『上方落語家名鑑』出版文化社、2006年

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