林景福

林景福（はやし けいふく）は、天正6年（1578年）に生まれ、慶長16年（1611年）に没した、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての人物です。彼は朝鮮半島出身であり、元の姓は朴（パク）といいました。初めは朴景福（パク・キョンボク）と名乗っていましたが、後に日本へ帰化し、林景福と改名しました。法号は仙朝坊（せんちょうぼう）といいます。彼は、薩摩国（現在の鹿児島県）の戦国大名である島津氏の家臣として活躍しました。

景福は、朝鮮国慶尚道（キョンサンド）の出身で、文禄3年（1594年）に勃発した文禄・慶長の役の際に、島津勢によって日本へ連行されました。その後、島津義久に召し抱えられ、日本へ帰化し、武士として生きていくこととなります。やがて彼は国分衆（こくぶしゅう）という、島津氏の家臣団の一員となりました。

島津義久が病に倒れた際には、景福は単身で小島へ渡り、あるいは霧島の火井（天然ガスの噴出口）に籠り、主君の病気平癒を祈願したと伝えられています。この行動は、彼がいかに義久に忠誠を誓っていたかを物語るエピソードとして知られています。しかし、その願いも虚しく、慶長16年（1611年）に義久が亡くなると、景福は主君の後を追って殉死を遂げました。享年34歳という若さでした。

景福の息子である林鎮澄（はやし しげすみ）は、島津義弘の娘である御下（おした）に仕えました。また、林家の子孫は佐志（さし、現在の鹿児島県薩摩郡さつま町）へ移り住み、その血筋は現代にも受け継がれています。

景福の辞世の句として、以下の二首が残されています。

「君は花 惜とすれと 春風に 散てやもとの 根にかへるらん」
「ともなくて いかてか跡に 残るべき 兎にも角にも 君の行く末」

これらの句は、主君を失った悲しみと、自身の運命を悟った心情を表現していると解釈されています。

林景福は、異国の地で武士として生き、主君に忠誠を尽くした人物として、その名は歴史に刻まれています。彼の生涯は、当時の武士道精神を体現するものであり、多くの人々に感銘を与えています。

参考文献

* 『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）

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