林材

明代の官僚、林材の生涯

林材（りん ざい、生没年不詳）は、明代の官僚であり、字は謹任、号は楚石と称しました。彼は福州府閩県を本貫とし、その生涯は激しい政治論争と官僚批判に彩られています。彼の言動は、当時の政治状況に大きな影響を与えました。

出世と直言

林材は林堪と陳氏の子として生まれました。1583年（万暦11年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。はじめは舒城知県に任じられ、その後、その才能を認められ、1589年（万暦17年）には工科給事中に抜擢されました。この頃から、彼の率直な物言いが目立つようになります。吏部が鄭洛を戎政尚書に、張九一を貴州巡撫に推挙した際、林材は両名とも不適任であると直言し、特に張九一については罷免される結果となりました。

王錫爵批判と皇子封王への反対

1593年（万暦21年）、王錫爵が首輔として北京に召し出されると、林材は彼を批判する上疏を行い、その舌鋒は趙志皋や張位にも及びました。さらに、万暦帝が朱常洛、朱常洵、朱常浩の三人の皇子を同時に王に封じようとした際には、林材はこれに反対する議論を展開しました。これらの行動から、彼が権力に屈しない強い信念を持っていたことが伺えます。

官僚批判と左遷

林材は吏科都給事中に転じた後も、その批判精神は衰えませんでした。南京尚書の郝杰と徐元泰を弾劾して罷免に追い込みました。豊臣秀吉の朝鮮侵攻（文禄の役）が起こると、明は救援軍を派遣しましたが、宋応昌が沈惟敬の提言を受け、秀吉を日本国王に封じて日明の勘合貿易を認めようとする封貢論を主張した際、林材はこれに強く反対し、宋応昌と沈惟敬を斬るよう求めました。しかし、この意見は万暦帝に聞き入れられませんでした。趙志皋や張位が林材の意見を不適切とした際も、彼は上疏して反論しました。1594年（万暦22年）夏6月、西華門で火災が発生した際には、同僚と共に政治の欠点を指摘しましたが、万暦帝の怒りを買い、官位3級降格と年俸1年停止の処分を受けました。御史の崔景栄らが彼を弁護しましたが、最終的には程郷典史に左遷され、郷里に帰ってからは表舞台に出ることはありませんでした。

名誉回復と晩年

1620年（泰昌元年）、林材は尚宝司丞として再び官界に復帰し、太僕寺少卿に転じました。しかし、間もなく引退を願い出て帰郷しました。1624年（天啓4年）、南京通政使として再び起用されましたが、その後に亡くなりました。崇禎初年には、右都御史の位を追贈され、その功績が認められました。著書には『福州府志』76巻があります。

まとめ

林材は、明代の激動期において、その直言と批判精神で一際目立つ官僚でした。彼は、権力に屈することなく、自身の正義を貫き、多くの論争を巻き起こしました。その結果、一時的に左遷を余儀なくされたものの、その功績は後世にまで語り継がれています。

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