林正美

林 正美

林 正美（はやし まさみ）氏は、1949年に神奈川県に生まれた日本の著名な昆虫学者です。長年にわたり埼玉大学で教育と研究に携わり、現在は同大学の名誉教授の称号を得ています。その学術的な専門分野は、昆虫の中でも特にカメムシやセミなどが含まれる半翅目（はんしもく）の系統分類学です。

学歴と職歴

林氏は、1972年に横浜市立大学文理学部を卒業後、九州大学大学院農学研究科に進学しました。大学院では昆虫学の研究に深く取り組み、1974年に修士課程を修了して農学修士号を取得。さらに研究を進め、1977年には博士課程を修了し、農学博士号を取得しました。

大学院修了後、1978年から埼玉大学教育学部で教育者としてのキャリアをスタートさせました。当初は助手の職に就き、その後、講師（1984年より）、助教授（1985年より）と段階を経て昇任しました。1998年には教授に就任し、教育学部において長年にわたり昆虫学の研究指導と教育に貢献しました。大学を退職後は、埼玉大学名誉教授としてその功績が称えられています。

研究活動

林氏の研究の中心は、半翅目の系統分類学にあります。この分野は、半翅目に属する多様な昆虫の種類を特定し、それぞれの進化的な関係性を明らかにする学問です。半翅目は、陸上だけでなく水中にも多くの種が存在し、生態系の中で様々な役割を担っています。林氏は、これらの昆虫の形態や生態、分布などを詳細に調査・研究し、その分類体系の構築に貢献してきました。

近年における特筆すべき研究活動としては、侵入種に関する調査があります。2016年夏以降、林氏は上尾市の昆虫研究者である碓井徹氏らと協力し、埼玉県川口市で確認された中国大陸原産の大型のセミであるタケオオツクツクの国内での繁殖実態について詳細な調査を実施しました。この共同研究による成果はまとめられ、2017年には日本セミの会の学会誌に報告されており、国内における特定外来生物の動向を把握する上で重要な情報を提供しています。

主な著作

林氏は、専門分野である半翅目に関する数多くの著作を執筆または編著しています。これらの著作は、研究者だけでなく、一般の昆虫愛好家にとっても貴重な資料となっています。代表的な著作には以下のようなものがあります。

宮本正一氏との共著『半翅目 Hemiptera』（東海大学出版会、『日本産水生昆虫』の一部として）
『節足動物，昆虫類，カメムシ類（半翅目）』（東海大学出版会、『琉球列島の陸水生物』の一部として）
『Homoptera ヨコバイ目（同翅目），Heteroptera カメシ目（異翅目）』（沖縄生物学会、『琉球列島産昆虫目録』の一部として）
佐藤正孝氏編著『新版 種の生物学』（建帛社）の一部を執筆
佐藤有恒氏との共著『セミの生活を調べよう やさしい科学』（さ・え・ら書房、1984年）
佐藤有恒氏【写真】、林正美氏【文】『アメンボ・コオイムシ・タガメ - カラーアルバム昆虫』（誠文堂新光社、1995年）
佐々木健志氏との共著『沖縄のセミ - 生態写真と鳴き声で知る全19種』（新星出版、2006年）
税所康正氏との共編著『日本産セミ科図鑑 - 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図』（誠文堂新光社、2011年、2015年改訂版）

これらの著作からは、水生昆虫から陸上のセミ、カメムシまで、半翅目の多様なグループに対する林氏の深い知識と研究の幅広さがうかがえます。

所属学会

林氏は、日本の昆虫学および動物分類学の発展に寄与するため、以下の主要な学会に所属し、活動を行っています。

日本昆虫学会
日本動物学会
日本動物分類学会
日本半翅類学会
日本昆虫分類学会
日本応用動物昆虫学会
* 日本セミの会

これらの所属学会での活動を通じて、研究成果の発表や情報交換を行い、日本の昆虫学コミュニティの活性化に貢献しています。

林正美氏は、半翅目の系統分類学を中心に、教育、研究、著作活動を通じて日本の昆虫学に多大な貢献をしてきた研究者です。

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