林邑

林邑（Lín-yì）— 古代ベトナムの王国

概要

林邑（りんゆう、Lín-yì）は、2世紀末から7世紀初めにかけて、現在のベトナムの広南省およびその周辺に位置していた古代の国家です。この国は扶南と同時期に栄え、チャム語話者によるオーストロネシア系の王国と考えられています。林邑の歴史は、さまざまな文献、特に古代の中国の記録から知ることができます。

建国の歴史

林邑の建国については、ドンイエン集落から発掘されたドンイエンチャウ碑文が重要な手がかりとなっています。セデスの研究によると、この碑文は3世紀ごろに刻まれたものとされ、中国の史料もこれを裏付けています。林邑は後漢の献帝の時代、後漢日南郡の功曹である区連により建国されたとされ、この時期が指摘されています。具体的には、初平年間にルーツを持つとされ、これにより林邑の成立年代は2世紀末から3世紀初めに特定されることが多いのです。

また、林邑の名は異なる表記で伝えられており、扶南や臨邑、跋南とも呼ばれています。このような表記の揺れは、音訳に基づくものと考えられており、セデスは扶南という名がモン・クメール語に由来することを示唆しています。

文化と王号

林邑の文化には、チャム語での王号の使用が見られ、これが王族の重要なアイデンティティを形成していました。中でも「クロン」または「Po Klaong」という名称が資料に残されており、特にチャンパ時代においても引き継がれました。したがって、林邑の王号と植物トーテムとの関係も強い影響を与えていたことが認識されています。

林邑文字と遺跡

歴史に残る林邑の文字は、古代中国の文献に「胡字」や「夷字」として言及されており、中国の資料はこの国の文化的背景を断片的に明らかにしています。特に605年以前に刻まれた碑文は、その時代の言語や文化の特徴を示しており、古代オーストロネシア系の影響を受けたものと考えられています。

滅亡とその後

林邑は605年に隋の劉方によって滅ぼされたと言われていますが、その後の歴史については謎に包まれています。隋滅亡以降も林邑は存在感を持ち続け、中国の王朝には朝貢するなどの文化的交流が続いていました。特に唐代には占城という名称が登場し、林邑の国号がこれに変わるなど、新たな展開を見せました。

日本との関係

日本との関係も注目すべき点です。『日本書紀』などの資料には、林邑とその周辺との交流が示されています。特に僧侶による文化の伝播や、林邑の音楽、芸能などが日本に影響を与えたことが記録されており、このことから林邑の持つ文化的な深さが伺えます。特に崑崙国との関係が重要視されていますが、それが林邑を指していることは確実です。

結論

林邑はベトナムの歴史において重要な位置を占める国家でした。扶南との関係や独自の文化、言語を持つ王国としての特異性は、現在でも多くの研究の対象となっています。今後も、この地域の歴史を深く理解するための鍵となるでしょう。

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