林雄一郎

林雄一郎（1912年 - 2004年）は、大阪の商家に生まれ、幼少期から音楽に親しみました。関西学院高等商業部在学中に関西学院グリークラブに入部し、学生指揮者としてその才能を開花させます。在学中に、彼は「関学トーン」と呼ばれる独特の響きを編み出し、1933年の第7回競演合唱祭で初出場ながら優勝を果たしました。

林は、西洋音楽、特にドイツの合唱曲に深く傾倒し、それらを徹底的に研究することで作曲家の意図を理解し、自身の演奏に活かしました。この探求心は、彼独自の合唱指導法を確立する上で重要な役割を果たしました。また、純正調ハーモニーの概念を合唱に取り入れようと試み、部員たちの音楽的な友情（メンタルハーモニー）を基盤に、見事「関学トーン」を完成させました。この「関学トーン」は、その後の関西学院グリークラブの飛躍的な発展の原動力となり、現代まで受け継がれています。

第7回競演合唱祭でのエピソードは、彼の情熱と不屈の精神を象徴するものです。東京の合唱団から嘲笑を受けたにも関わらず、その悔しさをバネに優勝を勝ち取った林の姿は、多くの人々に感動を与えました。この勝利は、単なる合唱コンクールでの成功に留まらず、地方の合唱団が全国の舞台で頂点に立てることを証明した出来事として、日本の合唱史に深く刻まれています。

卒業後、林は合唱指揮者、作曲家として精力的に活動しました。宗教曲、歌曲、流行曲など、多岐にわたるジャンルの合唱編曲を手掛け、その才能は山田耕筰にも認められ、全歌曲の合唱編曲を依頼されたほどです。彼は新月会の結成にも貢献し、初代指揮者としてその発展に尽力しました。関西合唱連盟の最高顧問や新月会の会長も歴任し、日本の合唱音楽界の発展に大きく貢献しました。

1979年には長井賞を受賞し、その功績が広く認められました。林雄一郎は、その音楽に対する情熱、革新的な発想、そして合唱音楽への深い愛情によって、日本の合唱音楽界に多大な影響を与えた人物として、今後も語り継がれることでしょう。

もう一度検索